7話
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けど―――趣味でやるにはとんでもなくキツいし本当にやってる人らに言ったら怒られるだろうけど―――MSパイロットは趣味でできるわけじゃないし、俺がユートだったとしてもこの道を選んでたさ」
「楽しい、ねぇ? 血族って奴?」
「遺伝要因は何も引き継いでないけど環境要因では大分影響受けてるだろうな」
「お前のマンマは教育熱心だったからな」
まったくだ―――2人で笑いながら、クレイは頭に浮かんだ肉親の顔を脳髄の奥にでも仕舞い込んだ。
クレイが先ほど思い浮かべた顔は、一つ。
母親の顔だ。
座った時と同じ掛け声で攸人が立ち上がる。つられるようにしてクレイも腕時計を見やる。
そろそろ戻った方がいい時間だった。
帰ってシャワーでも浴びよう―――とびっきり熱い奴だ。
「おろ?」
攸人の声。
なんだよ、と彼を見やれば背後の土手の上を見ているらしい―――クレイもその視線を追った。
赤く濡れた風が頬を撫でる。
肌が粟立った。
肺が誰かに握られたように萎縮し、心臓の拍動が気まぐれに乱れる錯覚を覚える。
少し小高い土手の上に、人が居た。
女―――というよりは少女と呼ぶ方がしっくりくる小柄な体躯。重金属プルトニウムの銀髪を長く靡かせ、干したばかりのシーツに垂らしたトマトソースのような真紅の瞳が妖闇の中で無邪気に幽らめく。
ビスクドールを想起させる綺麗な肌に人口の光が照りかえった。
「こんばんはっ」
頽落的な人間存在を鼻で笑う、その艶めかしさを内在した少女が口にした言葉は、しかしひどく日常的だった。
「よう、こんばんは」
気兼ねなく応じるクレイの隣の人間。そんな攸人の素っ気ない気兼ねさに安堵したのか、珠のような笑みをこぼした少女が覚束ない足取りで土手を下ってくる。
基地職員の人だろうか―――少女の容貌に眩暈を覚えたクレイは、目頭を指で抑える。そんなクレイを知ってか知らずか、ずいと脇腹を肘でつつく。
「ロリコン先生よ、あの子可愛いんじゃないっすか? 子どもっぽい感じの割に出るとこ出てるしぃ。ロリコンの癖におっぱい大好き先生様の好みドストレートだろう」
攸人が浮かべる猥雑そのもの―――卑猥の権化といっていい笑みに対して、普段なら窘める一言もあって良かったが、クレイはその少女の姿に釘付けになっていた。
無論、攸人が言うような理由ではない―――嘘。正直に言えば確かに可愛いなと思ったし、小柄な割にはSDUのジャケットらしきもの越しでも十分にわかる豊饒のアヴァロンに目がいかなかったわけではない。だがそれと同等―――ではなくそれ以上に、クレイは身体的な違和感を知覚していた。
上手く語りとして表現できない感覚―――。
脳髄の奥にヘドロが溜まるような感覚―――。
「おい……」
攸人に肩を掴まれた感触で、クレイ
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