7話
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と気さくに返しながらハンカチで顔面に張り付いたその濃緑色のゲル状物質を拭うと、「ひどい目にあったよ」と苦笑いをしてみせた。
「でも味は悪くないぞ。緑茶をめっちゃ甘くして冷たくした感じで」
指で濃緑色の破片を掬い、口に運んだ攸人が味を吟味するように視線を上にしながら言った。
「グリーンティーを甘くするってどこの魔法少女アニメの提督の発想だよ?」
「んなこたぁないぞ。日本の和菓子にだってそういう奴があるんだ」
「そ、そうなのか?」
「多分」
お道化たように肩を竦めると、攸人はストローの口からパックの中身を覗き込むように視線を降ろした。クレイも、釈然としない視線を自分の紙パックに注いだ。
自分の部屋で処理しよう。
一人決意していると、
「まだ走るのか?」
紙パックを開け、残った緑茶のジュース…ゼリーを指で穿り出しては口に運ぶ友人の素行に閉口しながらも、クレイは支給品の時計を見やった。
「今日はここまでにしとく。明日は《ゼータプラス》の試験だし、色々やることも多そう」
それもそうだな、と攸人も頷くと、2人は切りそろえられた芝生の上に立ち上がり、伸びをした。
《ゼータプラス》の試験―――第666特務戦技評価試験隊の結成理由とすら言われる、MSZ-006X1/2《ゼータプラス》の技術実証が明日にはあるのだ。ニュータイプ用による運用を想定された特殊機―――ニュータイプ、という言葉に複雑な評価を持つクレイは、しかし物珍しい試作機というその響きに得も言えぬ期待を持っていた。
「《ゼータプラス》のパイロット、大丈夫なのかなぁ」
空になった紙パックを折りたたみ、BDUのポケットに捻じ込んだ攸人が星空を見上げる。さぁな、と返したクレイも、思案するように腕組みした。
基本的な人員は、今朝のブリーフィングの際に顔を合わせた。中隊長のフェニクスに、第一小隊は攸人とヴィルケイ。第二小隊は《FAZZ》のクセノフォンとオーウェンに、《Mk-V》のジゼルとクレイ―――第一小隊の人員一人だけが、その場にいなかったのだ。そして、《ゼータプラス》X2型1番機のテストパイロットたるその人員は、どうやら気分がすぐれないという理由でいなかったらしい。
「気分がすぐれないって、なんだったんだろうな?」
夜空を見上げながら、手慰みに潰れた紙パックを弄る。単なる顔合わせなら、少しくらい気分が悪くても問題はないはずだ-――それだけ気分がすぐれなかったのか、はたまた別な理由があるのか。さぁな、とクレイもまだ新品の紙パックを弄りながら、息をするように返事をした。
「「強化人間」て奴だったりして」
少しの間の後、攸人がそんなことを嘯いた。思わず攸人の横顔を見た―――冥が降りた世界で、彼の顔を窺い知ることはできなかった。
X2型の1番機にはサイコミュデバ
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