6話
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クレイは、ここで逡巡―――だが、予想以上の速さで肉迫する《リゼル》相手に、ビームカノンを撃つかどうかの逡巡は、イコール撃つ暇など無いと同義であった。
間合いに飛び込んだ《リゼル》がビームサーベルを振るう。剣閃に合わせるようにビームジャベリを重ねたクレイは、予想外の威力に錯乱した。出力で勝る《Mk-V》が一瞬拮抗したかと思うと、次の瞬間には弾き飛ばされていた。
錐もみしながら、クレイはフットペダルを踏み込む。バーニア炎を急激に巻き上げ、廃市街の中へ降り立つ―――クレイは、まっすぐ伸びる通路の先に、白亜の《リゼル》が降り立つのを見とめた。
(よお、さすがに良い腕してんじゃねーか)
無線通信―――相変わらず軽そうな笑みを浮かべたヴィルケイの声が耳朶を打った。
(流石に2?1で落とせなかったのには驚いたぜ)
「あと数十してればやられていましたよ」
クレイは、そういいながら自機のステータスをチェックした。
数分間、重力下で飛び回っては強引な着地を繰り返したせいで、機体の全領域にある程度のダメージを負っていた。流石に赤いマーカーが点灯するなんて沙汰には陥っていないが、左腕に至っては、黄色のマーカーが点灯していた。模擬戦でここまで機体を傷めつけるのもそう多くはないだろう。後で始末書とか書かせられないよなと思いながら、ヴィルケイの《リゼル》を見やった。
左腕を抉られている以外は新品同様―――しかも、あの左腕の損傷もあくまでCG補正によってそう見えるに過ぎない。
《リゼル》がサーベルを構える。メガ粒子の刃が先ほどよりも高出力で発進され、Iフィールドで制御しきれないメガ粒子の刃の輪郭が幽らめく。
須臾を満たす残響。
先に動いたのは、《リゼル》だった。
クレイが動くより先に、白亜の《リゼル》が裂帛の気合でもって近接の間合いに飛び込む。
クレイも、ビームジャベリンを構え―――なかった。《リゼル》がバーニアを焚くのを見計らい、反射的な速度でビームジャベリンを逆手に持ち変える。後退の勢いのまま、《Mk-V》が右腕を振り上げ、内部フレームが流れるような動作でビームジャベリンを投擲した。
人間の動きを完全になぞるムーバブルフレームが成すその血肉を宿した一閃を追うかの如く、スラストリバースした《Mk-V》が右腕でサーベルを引き抜く。
Iフィールドの力場によって灼熱の刃が形成されるまでは一瞬。逆負荷のGに身体を滅多打ちにされながらも、クレイは唇が千切れるかのごとく噛みしめ、眼球を前に固定し続けた。スローモーションにすら見える世界の中で、粒子ビームの刃が発振されたジャベリンを、その白の《リゼル》はサーベルで掬い上げるようにして切り払う。柄の部分を両断されたハイパービームジャベリンが束の間宙を舞う―――クレイは、強ばり引きつった笑みが浮かぶ
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