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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
4話
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構成されたBDUに、上にはタンクトップのインナーオンリー。フライトジャケットは熱いからという理由で腰に巻いてあるのだが、とにかく精神衛生上好ましくない。
 思えば、ブリーフィングと食堂の時にも気づいていたはずなのだが―――女性と二人で並んでいるという状況に、思った以上に慣れていないクレイ少年は、その豊かな双子の小鹿を横目で精いっぱい盗み見ていた。単なる変態である。
 手のひらには収まりそうにないほどの豊饒が視界の中ではしゃぐ都度、良からぬ感情が脳髄の中に澱のように沈殿する。そしてまた、生真面目なクレイ青年はその都度自分の思考に訂正を入れるのである。
 クレイ・ハイデガーという青年は、情けない童貞だった。
「あら、あそこにいるの―――」
 煩悩の化身が指をさす。でかでかと『7』の数字を描いた格納庫の手前に、豆粒のような人影を差しているらしい―――目を細めてみたものの、人相は判別できそうにない。
「小隊長じゃないかしら」
 平然と、ごく当然のことを言うようにジゼルは口にした。
「見えるんですか?」
「ええ、まぁね」
 マジか、と内心呟きながら、クレイは今一度目を凝らしてみた。視力検査では2.0と常人を遥かに超える視力を持っていたが、クレイにはどうにもそれが誰なのかを判断はできない。
 隊長〜、と手をぶんぶん振るジゼルを横目で見る。
「どうしたの、笑っちゃって」
 ぽかんとした表情で、ジゼルが言う。何のことかわからず、クレイも数秒沈黙し、ようやく自分が笑っていたらしいと表情の感触で理解した。
「ちょっと思い出し笑いを」
 咄嗟にそんな返答をした。ふーん、と探るような目をしたのも一瞬、いつも通りの柔和な笑みに戻った。
「笑った顔、ちょっとかわいかったよ」
 悪戯っぽい笑みを浮かべた。うんともすんともつかない、返答かも怪しいうめき声を上げるしかできなかったクレイは、顔が赤くなるのを感じるまでもなく理解し、口を噤んでしまった。
「今まで言われたことありませんけどね」
 間の後、精々ひねり出せた声がこれだった。素っ気なく言おうとして、声が上ずった気がしたが、気にしなかった。
「見る目のない女しかいなかったんじゃないの?」
「そうですかね……」
 平気な顔で辛辣なことを言う。格好いいとも言われたことが無いぞ、と思ったが、言ったところで哀しくなるだけで―――というか、辛くなった。泣いた。
 お世辞か、からかいか。どちらかだと思うようにしたクレイは、両手で頬を摘まんだ。変に強張った顔をむにむにと解しながら格納庫の方へ歩いていく。
 数分ほど歩き続ければ、格納庫は目前だ。入口付近で談笑している2人組みを注視すれば、なるほど小隊長だ。
 艶の良い黒髪には白髪の混じりは無く、壮年ながら若若しさを漂わせる男だ。オーウェンほどの体格は無い
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