3話
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と攸人も後を追う。腰まで届く長い髪がふわふわと揺れた。
「部隊の説明なんかは資料を読んできてあるだろうから割愛する。今日は貴様らの技量の把握と、部隊内で親睦を深めてもらうためにVIBSを使用しての実機戦闘をしてもらう予定だ」
「今日ですか? しかも実機で?」
青天の霹靂―――とまではいかずとも、いささか意外だった。事前に渡された資料では、VIBS―――仮想情報戦闘システム―――による演習は明日だったはずだ。MSの各種センサーを利用し、CG補正が施された仮想空間での戦闘を行う特殊プログラム。実際はふききっさらしのだだっ広い演習区画で行うのだが、まるで実際の都市部があるかのような映像が現れ、その中で戦闘する―――幾ばくか前に流行った、仮想現実空間でのインターネットゲームに近い。このプログラムの優れているところは、模擬弾を使用せずに、実際の武装を空撃ちするだけで機体側がそれを認識、さながら本当にメガ粒子を放っているかのように見える点だ。もちろん直撃すれば実際と同じように被弾の衝撃などが襲い掛かり、機体側も被弾箇所の操作を受け付けなくなる。さらには武装を使用し、機体重量が変化した際の僅かな機体制御の変化などすら再現するシステムだ。
「ちょっと予定が変わってな。本来今日整備を終えるはずだった機体が昨日のうちに整備が終わって、丁度今日貴様らが着任というんだからじゃあ今日やっちゃおうということらしい」
エレベーターのボタンを押しながら、フェニクスが振り返る。少しだけ見えるあの大仰な扉を見やり、大げさに困ったような顔をしてみせた。発案者は、ハミルトンらしい。案外無茶な事を言う人だとため息交じりに思っていると、
「今の士官学校の訓練機はなんだった?」
「MSR-100T《百式改》とRMS-106T《ハイザック》と……」
「MSZ-006T1《ゼータプラス》ですかね。中等・高等演習機はこの3機です」
ふむ、と腕組みしながら顎に手を当てて思案すること数秒。先ほども聞いた、不似合な安い音とともに重い扉が開くと、フェニクスは歩を進めた。入り際に開閉ボタンを押し込み、続いて別な階へのボタンを押し込む。
「カンザキ、ハイデガーの乗る機体は決まっていてな。士官学校出なら問題なく乗れるだろう」
「もう決まっているんですか?」
「一応な。後で言うことになるが、カンザキは第一小隊、ハイデガーは第二小隊に入ることになる」
エレベーターの駆動の停止と共に、音を引きずりながら扉が開く―――。
目的地は、そこから数分とかからない場所だった。第1ブリーフィングルームとのプレートが壁から突き出た部屋だ。こちらは自動ドアではないらしく、真新しい銀色のドアノブを見て取れた。
「呼んだら入ってくれ」
それだけ言い残し、フェニクスがドアノブに手をかける。ドアを開け、フェニ
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