1話
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けたような声だった。小隊の自慢の金髪も、今はむさくるしいヘルメットの中に押し込めているようだ。
「エイリィの言う通りだ。無駄に深追いしない方がいい」
念押しのように言いながらも、不要だったかなと思った。プルートとて数年来MSパイロットをしている。
戦車や戦闘機とは比較にもならない精密機器群が織りなす構造物たるMSの操縦は、相応の難易度を持つ。それを操作しうるMSパイロットには、常に合理的な指向が要求される―――つまるところ、本当の意味での『バカ』には乗りこなせない代物なのだ。エースパイロットもなれば尚更で、普段の素振りはどうあれエースパイロットはすべからくインテリが多い。プルートの技量も、強化人間―――要するに人為的なニュータイプとしての素養に依るところが多いが、だからといって本能的な戦闘を行っているのではないのだ。
プルートの発言は、単に何か話がしたかったから、という意外にも寂しがりやな彼女の嗜癖からというだけの話なのだ。うん、わかったとプルートが素直に首を縦にふると、示し合わせたようにブリッジからの無線通信が入る。
(ハッチ解放完了。第1小隊、出撃せよ)
30代ぐらいのフランクそうな黒人の顔が厳めしく映る。思い出したようにHUDを確認すると、確かにその通りだ。
「ヴォルフ・リード了解。第1小隊出撃するぞ」
了解、と2人の声が耳朶を打つ。アームレイカーを握りしめ、己が愛機たるAMX-014C《ドーベン・ウルフ》がハッチの縁に立つ。黒と青で構成された宇宙迷彩に身を包んだ闘狼が膝を曲げるのと同時に、腰部に接続されたケーブルが火花を挙げて引き抜かれる。地上で言うところのジャンプの要領で『クリストファー』から身を跳躍させたマクスウェルは、視界いっぱいに広がる常闇の宇宙を一瞬流し見ると、即座に『クリストファー』との相対距離を測る。続いて『クリストファー』から身を這い出したAMX-004G《キュベレイ》とMSN-03《ヤクト・ドーガ》が同じように慣性移動に身をゆだねる。『クリストファー』との相対距離が十分なほどに開いたのをディスプレイ上のデータで確認し、マクスウェルは《ドーベン・ウルフ》の炉に火をくべた。光を背負った《ドーベン・ウルフ》に続き、エイリィ駆るカーキにダークブラウンの《ヤクト・ドーガ》にパープルと灰色に身を包んだ《キュベレイ》がバーニアを焚いて、それに続く。
「いいか、さっきも言ったが敵戦力を漸減するだけでいい。無理に撃破しようとするな」
エイリィとプルートが了の返事を返す。心なしか、プルートの声は元気な様子だったように感じた。それはそれで至極構わない―――むしろありがたいことだ。そんなことを思いながら、マクスウェルは黒塗りの世界に視線を彷徨わせた後に、《ドーベン・ウルフ》の最大の特徴ともいえる、『インコム』を起動させ
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