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101番目の舶ィ語
第二章。ベッド下の男
第三話。口は災いの元っていうけど、ヒスキンにとってはそれがデフォ!
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だったかな?

「なんでも、一人暮らしの女の子の家のベッド下に隠れてて、寝静まった頃に包丁とか斧とかでザックリ! って殺しちゃうらしいの」

ホワイトボードに先輩は、ベッド下に黒い人影を描いて『包丁』とか『斧』とか『おっかない!』とか、どんどん描き加えていく。本人は本気で怖がっているのだが、なんだか微笑ましく見える。

「ああ、あたしも聞いたことがありますね、その噂」

「お、そうなの、音央ちゃん?」

「ええ。一人暮らしの女の子の家に泊まった子が、突然寝ている家主を起こして『コンビニに行こう!
私、アイス食べたくなっちゃった!』って叫び出すとかで。
それで家主がその剣幕に驚いて部屋を飛び出したところで『貴方のベッドの下に、包丁を持った男がいたの!』って慌てて警察に駆け込むっていうお話」

「そうそう、それそれ! わたしが聞いた話もそれだよ!」

……ああ、やっぱりその都市伝説か。
聞いたことがあるな。
聞く話の内容次第ではベッド下の男が斧を持った女に変わってたり、ベッド下に煙草をもみ消す何者かの姿が見えたりといったバリエーションがあったりする。
そんな風に俺や音央でさえ知っているメジャーな都市伝説。
つまりはかなり強いロアが現れたのかもしれない。
そんな事を考えていると一之江は弁当を食べる手を止めて先輩を見て尋ねた。

「先輩は、一人暮らしなのですか?」

「そうなの! だから、ちょっと怖くてー……」

先輩が一人暮らしというのは俺は既に知っていた。
あの日(・・・)、詩穂先輩をお姫様抱っこして街中を走り回った時に先輩の自宅前まで行った事があるからな。
しかし、詩穂先輩みたいな可愛い人が一人暮らしをしているとか。
……家庭の事情とかがあるのかな。
聞いてみたいが……聞くのもなぁ。

「会長って一人暮らしなんですね。ご両親は?」

そんな俺のハードルをあっさり乗り越えていくのが音央だった。

「うん、外国なのっ。イタリアのフィレンツェだよん」

イタリアか。
イタリアと聞くと幸運加護持ちのシスターやらバチカンとかを思い出すな。
元気かな、メーヤとか。

「わたしも卒業したら来ないか、って言われているんだけどね」

そうか……仕方ないよな。
そう『俺』は思うものの。
先輩のその言葉に、俺の中のもう一つの想いがざわめいた。

「へえー、先輩はどうするんですか?」

『俺』は平静を装いつつ、笑顔で尋ねた。

「んー、大学に受かったらこっちのままかな? 落ちちゃったら行くかも」

『っ!』

俺の想いとは裏腹に先輩の返事はあっけらかんとしていた。
だが『俺』は納得してしまう。
そうか、そうだよな。両親がいるんだったら一緒に暮らすのは普通だし
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