暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
北の騎士の選択
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取って、導かれるまま教会へと上がる。

 ……たった今、降りてきたばかりだと思うのだけど。
 外に用事があったわけではないのか?

 嫉妬剥き出しの女性達に見送られつつ。
 中心に赤い絨毯を敷いた左右対象の造形が美しい礼拝堂を、左奥へ進む。
 いくつかの木製の扉と、関係者以外立ち入り禁止! と書かれている札をしれっと無視しているが。
 部外者の私を招き入れて大丈夫なのだろうか?

 緩やかに曲がった廊下を歩いていくと。
 ちょうど礼拝堂の祭壇裏に位置する部屋があった。
 豪華な装飾が施された両開きの扉を押し開いて、室内へと招かれる。

 きらびやかな礼拝堂とは正反対に、裏の部屋は驚くほど質素だ。
 書棚三つとクローゼットが一つ。
 手持ち燭台を乗せた四角いテーブルに添えられた椅子が二脚。
 ベッドが二台と、その間についたてが一枚あるだけ。
 部屋の左右に片開きの扉が一枚ずつあるが……
 多分、浴室と執務室だな。
 窓も暖炉も無いのに、息苦しさも寒さも感じないのは。
 床に対して傾斜がついているガラス張りの天井が妙に高いからか。

「ここでお待ちいただけますか? すぐに呼んできますので」

 アーレストさんに椅子を勧められ、大人しく着席する。
 すぐに呼べるということは、会わせたい人とは教会関係者なのか。
 『宗教に携わる知人』に心当りなどないのだが、はて?

 静かに扉を閉め。
 出て行ったかと思えば、本当にすぐ戻ってきたらしい。
 凄まじい轟音(ごうおん)を伴って廊下を走る気配がする。
 何事かと腰を浮かせた瞬間、ダンッ! と扉が開かれ、

「フィぶっ!!」

 壁にぶつかった反動で、また閉まった。
 閉じた扉で顔面を盛大に打たれた人物の潰れた悲鳴が……

 ああ、なるほど。

 椅子から立ち上がって、扉をそっと開けば。
 鼻血が流れる顔を押さえてひっくり返った真っ白な長衣姿の男性が一人。
 アーレストさんにも劣らない長さの金髪を絨毯の上に散らして。
 若葉色の目を潤ませている。

「だから落ち着きなさいと言ったでしょう、ソレスタ」

 廊下をゆっくりと歩いてきたアーレストさんが、呆れた表情で頭を掻く。

「どぅっぶぇ! ぶぃぶぇぶぐぁ!」
「まずは鼻血を止めてきなさい。聞き取りにくいったらありゃしない」
「ぶぅーっ!」

 ガバッと立ち上がり、また廊下を戻っていった。
 そして、光の速さで私の前に立つ。
 鼻血の処置は完璧で。
 おそらく全力疾走の直後だろうに、呼吸がまったく乱れていない。

 相変わらずの超人ぶり。
 さすがです。

「よお! 元気だったか、フィレス!」

 片手を上げ、青年らしい爽やかな笑顔を見せてくれた、
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