放浪剣士
魔女の血を継ぐものV
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しかし、避け続ける事も難しい。
ならば―――。
私は踏み込み、横凪ぎに人狼へと剣を振るう。
が、その一撃は避けられ虚しく空を斬るのみ。
うまく呼吸をあわせ、人狼が避けた先で彼女が炎を繰り出すも、奴はいともたやすく払い消してしまう。
どれくらいの攻防だろうか。
それほどの時間はたっていないだろう。
長期戦は好ましくない。
体力的にも精神的にもだ。
だが、私と彼女を相手に人狼は巧みに攻撃をかわし続ける。
らちがあかない。
このままでは殺られるのは私達。
いや、私か―――。
「困ったわね」
身軽に人狼の反撃をかわすと、困っているようには見えないが彼女はそう呟き、ため息をつく。
一瞬の隙。
しかし奴はそれを見逃さない。
目にもとまらぬ速さで彼女との距離を詰めると、人狼はその鋭利な爪で彼女を切り裂いた。
赤い血飛沫。
彼女の胴体と下半身が切り離され宙を舞う。
飛び散る臓物。
私は目を疑った。
こうもあっさりと決着はついてしまった。
この感覚は絶望なのだろうか―――。
いや、違う―――。
そうじゃない―――。
私が目を疑ったのは―――。
この感覚は―――。
私は見た。
胴体が切り離された瞬間、彼女は笑っていた。
私が感じたこの感覚は…恐怖。
胴体がぐしゃりと地面へ落ちる。
それと同時にだった。
場の雰囲気ががらりと変わる。
重く、重圧がのし掛かったかのような感覚。
足が思うように動かず、息をすることもままならない。
だが、それは奴も同じのようだ。
と、するならば。
「すぐに片付く予定だったのだけれど…余計な邪魔が入ったおかげで……」
これは、彼女の空間。
「ごめんなさいね。楽には殺せなくなってしまったわ…」
眩い閃光。
そして熱。
信じられない光景だった。
彼女は巨大な炎の翼に身を包まれ空中へ昇ってゆく。
上昇をピタリと止めると、ゆっくりと開かれていく翼。
私も、人狼も…ただそれを見ているだけしかできない。
悪魔―――。
いや、天使―――。
魔女だというのに、その姿は神々しくすら見えた。
やがて翼が開ききると、そこには切り離された下半身が何事もなかったかのように元通りになった彼女の身体があった。
「この力は…まだうまく使いこなせないから………」
彼女が言い終わると、人狼の周囲から赤い光のオーブが舞い上がり始める。
徐々に増す光の密度。
それはやがて一本の光の柱と形を変えてゆく。
助けを求めるように人狼は手を伸ばすが、無情にもそれは止まらない。
人狼は抵抗もできぬまま光の中へと
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