放浪剣士
魔女の血を継ぐものV
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風と微かな雨の音。
古びた家の壁は薄く、外の音を鮮明に伝える。
とても休めたものではなかった。
この家のなかでは私ただ一人が人間。
獣の群れの中で寝ているようなものだ。
床についてからどれくらいの時間が経っただろう。
アリスのほうを見ると、すやすやと寝息をたて魔女と言うことを忘れてしまいそうな穏やかで愛くるしい寝顔をしていた。
少しではあるが同情してしまう自分がいる。
魔女の子供でなければ普通に生きられたであろう。
アリスのこの先などとても明るいとは言い難い。
いずれは発覚する。
魔女であると―――。
どういう形であれ、この少女は天命を全うすることなく死を迎えてしまうのだろう。
考えてはいけない―――。
いたたまれない気持ちに背を向けるように私は寝返りをうった。
その時だ。
暗闇の中、むくりと起き上がる二つの影。
彼女と母親だ。
剣を握る手に力が入る。
しかし、私が眠りについていることに気が付いていないのか、二人は静かに立ち上がると外へと出ていった。
何処へ行くのだろう―――。
幼い少女を一人残すという不安を抱きながらも、私は剣を腰に付けあとを追うことにした。
扉を開くと、それまで壁に遮断されていた風と雨に身体を濡らされた。
それ以外に音のない世界。
周囲を見るが二人の姿はない。
いったい何処へ―――。
ちょうどその時だった。
先程の見回り兵士二人が歩いていた。
女性二人を見なかっただろうか―――?
しかし、兵士は二人とも顔を見合せ首を横にふる。
「こんな遅くに女性二人?」
「見かけたらさすがに連行している」
それもそうだ、とあまりに馬鹿馬鹿しい質問に我ながら笑ってしまいそうになる。
こんな夜更けに女性二人で出歩くなど怪しさ極まりない。
二人とも魔女なのだ。
どうせ、あの時の魔術で姿を隠しているのだろう。
すまなかった、自分で探すことにする―――。
その言葉に、兵士は顔をしかめた。
「こんな時間に女性二人出歩くなど普通じゃない。俺たちが探そう」
当然そうなる。
私はため息をつき、懐から一枚の紙を取りだし兵士へと見せた。
その紙を見たとたんに目を見開き驚きを隠せないまま敬礼をしてくる兵士。
「し、失礼いたしました。では、この件はお任せいたします」
まったく、面倒なことだ。
私は兵士を尻目に二人を探すために郊外へと足を伸ばす。
あれからそれなりに時間がたっている。
何かをするつもりであるなら、もうそれは終わっていてもおかしくはない。
なかば諦め探していると、左側…少し小高い丘に二つの人影を見つけた。
もしや、と私の
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