第2章 反逆の少女たち
第19話 マリアの受難
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の声が聞こえなくなったと同時に、再び世界は動き出した。
「ッッ!! う、動ける!」
「……どうした? 大丈夫か?」
ユーリは、男の方へとゆっくりと歩いていた。本当に時間が止まっていたとしか思えない状況だった。
「い、いや……なんでもない。どうかしたのか? オレに何か?」
「……口調、変ってないか?」
「っとと、そうじゃったな」
ユーリの疑問に慌ててミイラ男は口を押さえつつ、そう言っていた。
「ああ、用って程の事じゃない。道具袋の中に これがあったんでな?」
「これは……」
「桃りんごだ。うはぁんにも使う高級食材。今はこれくらいしかないからな」
「お、おおっ! 本当かぃ! どうもありがとぁ!」
ミイラ男は受け取った桃りんごを見てまるで、上に掲げるようにしてそう言っていた。
「こ、こんな物を再び口に出来る日がくるとは!」
「はは……、これ程の剣の対価だと、うはぁんだけじゃ、安すぎるからな。これでも足りないが生憎持ち合わせが無い。……分割払いだと思ってくれ。それじゃあな」
ユーリはそう言うと、手を振りながら部屋を後にする。そして、部屋を出て行ったその時、ミイラ男の目つきは変わった。包帯で体中を巻いているから見えにくいがはっきりと、変ったのだ。
「……あの男は、何者なんだ?」
考えてもわからない。
だが、悪いヤツじゃないとは判る。あの声も……同様に。
「また、会える日を気長に待つとしようか……」
ミイラ男は声の正体を粗方確信をしつつ、りんごを、しゃりっと齧った。重厚な果汁が口の中に広がる……。それを噛み締めながら、再び棺の中へと戻っていった。
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