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異界の王女と人狼の騎士
第三十九話
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「違う違う」
 と、俺。

「何が違うってーの。ついに月人君も塗り固めた嘘にボロがでたからやけくそになったのか」
 そうやって俺を責め立てる蛭町。

「もういいじゃん、蛭町。そろそろ俺たちも退屈になってきたからさ、ゲームやらせてくれよ」
 後ろで突っ立っていた男が舌なめずりしながら催促してきた。

「もうちっと待ってくれよ。いまいいところなんだから。あとでたっぷりお礼をするからさ、……ね」
 そうやって連中を宥める。蛭町はこの不良グループを何かの代償を差し出すことで協力を得ていることが如実に分かる。偉そうに言っていても連中を恐怖しているんだ。

「しかたねえな。まあ月人君が可愛い外人ちゃんを連れてきたから楽しみは増えたからいいけどさ。でも、もう我慢できねーかも! 」
 そういってそいつはジーンズの上から股間をごしごしとしごいた。

 何のゲームをするつもりかしらないし、何をトチ狂ったか知らないけど王女を襲うとしているようだ。

馬鹿だな本気で。こいつらはもはや明日を迎えることはできないことを知らないのだ。俺の中ではこいつらには既に死刑宣告が告げられている。
 それはともかく、とにかく漆多の誤解を解かないといけない。

「分かった。本当の事を言うよ。こんな事言ったって信じてくれないだろうから今までは言わなかった。でも日向が死んでなお名誉を傷つけられるのには耐えられない。……よく聞けよ」
 そういって俺はあのときの事を話した。
 如月が如月でない、得体の知れないモノに変形し、俺を半殺しにした後、寧々をレイプしたことを。

 話を聞いてしばらく漆多は黙っていた。そしてあきれたような顔をした。
「いい加減にしてくれ。そんな子供でも信じないような嘘を言われて、それを信じろっていうのか。お前、俺をどこまで馬鹿にしたら気が済むんだ。くそ。俺は本当に馬鹿だ。……お前みたいな奴をずっと親友だと思っていたのか。くそくそ。寧々と付き合えるよういろいろやってくれたって感謝してたのに、お前は俺をからかっていたんだな。そして寧々の心を弄んでいたんだ。……俺を馬鹿にするのは良いよ。でも寧々の気持ちを踏みにじったお前を俺は許す事なんてしないからな。寧々はもうこの世にはいないんだ。慰めることも、励ますことも、抱きしめてやることもできない。……お前に謝らせることさえできねえんだ。可愛そうだよ、寧々は。くそくそくそ」
 大粒の涙をぼろぼろと流しながら、親友は地面に跪いた。呻き喚き歯ぎしりをする。

「嘘じゃないんだ……」
 俺はほとんど声にならない声で呟き続けた。涙が出そうだ。


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