33.君を想う人を忘れないで
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な影があることには気付かずに。
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人生には、何故か妙に厄介事に絡まれやすい日というのがある。
多分今日の僕はそれなんだろう、とベルは思った。
「だ、か、ら!ヘスティア・ファミリアのホームに行くには右の通りに出ないと駄目なんだってば!どーしてエアリーのいうこと聞けないの!?」
「私だって右に向かっているつもりです!うう……ち、ちょっと迷子になってるのは求めます。しかし、今回ばかりはティズに頼る訳には行かないのです!」
「そう言っておいてティズに無断で飛び出した結果がこれでしょ?ああ、なんかこのままだとオラリオ内で遭難して一生出られなそう……」
一つは甲高い少女の声で、もう一つはどこか意地になっているような声。
その声の主は、道具袋からひょっこり出した顔と、その道具袋を抱えた長髪の美女。
帰り道にどうも騒がしい声が聞こえると思って路地に寄り道したベルは、そこでこの前会ったばかりの知人を発見した。
「アニエスさん?それにエアリーも……こんな所で何やってるんですか」
「ひゃあっ!?……あ、なんだベルじゃないの」
「迷ってませんよ!!」
「まだ何も言ってないですけど!?……でも、どっちにしろ迷子っぽいですね……」
「ち、違います!!」
隠そうとしても無駄である。何故ならば最初から隠せていないからだ。
「もう、意地張っちゃって……ホントに遭難しちゃうよ?」
ヤレヤレと呆れたエアリーは道具袋の中に顔をひっこめてしまった。
話の内容はよく聞こえなかったが、どうやらティズに黙って町をうろついたらしい。
元気なのはいい事だが、流石にあの方向音痴でそれは無謀と言わざるを得ない。むしろ一応ながらホームにそれなりに近い位置に、しかも周囲にエアリーの存在を悟られないまま来れたのなら奇跡といって過言ではない。
「そ……それより丁度いいところで会いました、ベル。実は今から女神ヘスティアに謁見を申し込みたいのですが……」
「え、こんな時間にですか?それにティズさんもいないのに二人だけでですか?」
「……今回の話はそのティズに関する事です。本人がいてはややこしくなります」
相変わらずどこか素っ気ない口調のアニエスだったが、遭難承知で態々ここまで来たのならばよっぽどの用事かもしれない。知らない中でもないし、多分神様もそろそろ帰ってきている筈だ。
「……分かりました、細かい事は聞きません。案内するので手を……その、はぐれられると困るんで」
「アニエス。ここは素直に手を繋ぐべきだとエアリーは思うなぁ」
「う……わ、分かりました」
困ったように頬を掻きながら、ベルは差し出されたアニエスの手を握った。
(アニエスさんの手、手袋越しでも暖かいなぁ……
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