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黒き刃は妖精と共に
【白竜編】 噂
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「白い竜の噂?」

 僕が化猫の宿(ケット・シェルター)に入って一週間。
 日常的に行っている植物の世話や売り物の管理、その他ギルド内の決まりや設備云々なども覚え、ようやくいろいろと落ち着いてきた今日日(きょうび)。僕はウェンディちゃんとシャルル、その他数名のギルドメンバー先導のもと近くの町に生産物の販売に来ていた。
 町、といっても外界との積極的な交流を好むわけではないケット・シェルターの交易相手。ぎりぎり集落や村といった規模よりは大きいといっただけだ。
 前からもいろいろ売りには来ていたらしいが、なにぶん一回に運べる量が限られており、品質や完成度の評価は高かったものの量が少なくて行き渡らないといった事態がたびたび起こっていたらしい。今回は僕、文字通り人外の怪力を誇る人手がいたため満足な量を持ってくることができたと喜ばれたものだ。
 基本的に戦闘による収入を主にしていた身からすれば、こうして売る側に回るというのは初めての経験であり、なれない点も多かったが大きな町にある商店などと違って割りとフレンドリーな対応で売買が行われているためそこまで気負うことも無くこなせた。
 僕の着ている着物も人目を引くようで、あちらから話しかけてくることが多く割とすんなり溶け込むことができたのだ。笠や羽織は纏っていないので怪しい姿にもなっていないし。
 生産系ギルドに所属する以上、今後も戦闘よりはこういった商業者じみた日々を過ごし、派生した依頼を受けたりすることが多くなるのだろう。
 まだ一週間だが、今までのように一日中歩いて各地を旅するような日常を過ごさなくなる以上毎日体を動かす必要も出てくるだろうか……。ウェンディちゃんによれば木を切ったり畑仕事をしたり割と体力を必要とする日もあるそうだが、戦闘に比べてしまうと少々物足りないだろう。
 と、いろいろ考えながらも、種類も量も豊富なためウェンディちゃんいわくいつもよりたくさんの人がいるらしい今日の状況。その中、野菜の値引き交渉をしていたお客の一人が、白い竜の噂を聞いたというのだ。

「苦し紛れに使うにはなかなか思い切ったもの提示してくるねお客さん」
「いやいや、本当だって。たびたび竜の噂をお嬢さんが聞いてる様だったから、お世話になってるし出かけついでいろいろ聞いてたんだけどさ、今回はそれを見たって人に直接会ったんだよ」
「ふーん」

 ちなみに僕は売り子ではない。金銭の管理・物品の名称・各個の値段・珍しいものの用途、計算はできるとはいえそれだけでは商売はできない。物品の移動や受け渡しを行いながら見て学んでいるのだ。
 そんな中、ウェンディちゃんが困っているようだったので僕が横から口を出したのだ。
 本来ならシャルルの役目だろうが、あの特徴的な生物は子供たちに大人気らしい。駆け回る子供たちからふ
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