暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
捕食者の末路
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「ユルアアァァァ!!」

鳴き声とも悲鳴ともつかない叫び声を漆黒の騎士が上げた。

すでに戦闘開始から二十分もの時間が過ぎていた。

黒銀の鎧の体のそこかしこにできた大小様々な傷口からは、黒ずんだ粘液のようなものが流れ続け、騎士が瀕死なのが窺える。

しかし、討伐隊からもすでに三人の犠牲者が出ている。

大人数でかかれば楽勝、という甘い幻想は戦闘開始直後に霧散した。

黒銀の鎧は、近寄ってきた壁仕様プレイヤーを、巨大な籠手のついた右手で鷲掴みにし、牙の生えたあぎとに持ってきて──

喰った。

その壁仕様プレイヤーの悲鳴は、丸々三分間響き続けた。

そして、その体から力が抜け、ポリゴンの欠片となって砕け散った男にはもう目も向けず、漆黒の騎士にはこちらが驚くようなことが起こっていた。

──HPが回復している!?──

激しい戦いで、傷ついたその鎧についた、大小様々な傷口が急速に塞がっていった。

同時に危険域(レッドゾーン)ぎりぎりに踏みとどまっていた黒騎士のHPが、一気にフル回復した。

そして、先刻まで無くしていた勢いを取り戻し、猛然と討伐隊に襲いかかってきた。

討伐隊は傷ついた体に鞭打って、それを迎撃する。

しばらくして、黒銀の鎧の体力を苦労してすり減らすと、またあぎとを開き、また一人犠牲者が出た。

戦いの決着は、すでに目に見えていた。

それも当然と言えば当然だ。

黒騎士と違い、討伐隊プレイヤー達が持っている回復アイテムには限りがある。

いつか来る終わり。

いつか来る死。

討伐隊の間には、絶望感、虚脱感、諦め。

様々な感情が芽生え、花開いていった。

だが、そんな討伐隊の中でも、人外の集中力で黒騎士と渡り合っているプレイヤー達がいた。

言わずもがな、六王である。

白銀が、パワーで押しきり。

紅が、十字盾で防御し。

オレンジが、素手で投げ飛ばし。

紺が、様々な剣技で翻弄し。

紫が、一本の剣だけで的確に傷つけ。

そして、血色が切り刻む。

だが、彼らの圧倒的な攻撃を前にしても黒騎士は倒れるどころか、より激しさを増した攻撃を繰り出し、荒ぶった。

傷ついた体から体液を滴らせ、巨大な両刃剣を振るう。

「このままでは、埒が空かないですな」

シゲさんがヴォルティスとすれ違い様に囁く。

「あぁ…やはり周りに輩がいると、全力が出せないな……卿もそうだろう?レンホウ」

ちょうど近くを通り過ぎたレンに言う。

レンは小さく頷く。

「……ヒトがこれだけ周りにいるとね」

レンの武器は《鋼糸(ワイヤー)》だ。

リーチが命の、その異端の武器は当然、周りにプレイヤーがいると巻き
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