第4話「破壊狂は敵を前にして世界を詩う」
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こちらを見下ろすグラハムを双葉は見上げていた。
それは鋭く睨むわけでも、負けじと抗うわけでもない。
ただ見上げていたのだ……『破壊』を楽しめる少年を。
その少年に双葉のよく知る男が覆いかぶさる。
高杉はいつも笑っていた。
どんなに皮肉を言っても拒んでも。危険に囲まれようが、旧友と袂を分かとうが、刃を向けられようが、不気味に笑っていた。
最初は狂気に堕ちた高杉は何も感じられず、ただ笑うしかできないと思っていた。
あの小屋でもう笑うしかなかった自分のように。
だがそんなの思い違いだった。
高杉は本当に起こる事すべてを当然と楽しんで笑っていたのだ。
まさに今のグラハムのように。
「だから『破壊』を楽しむのも幸せを感じる一つの手段としてアリだと、オレは主張したい。幸せの通りなんてこの世の人間の数だけ存在するんだから、壊れたら壊れたでそれを楽しもう」
壊れてしまった人間はそのまま狂気の道へ進むしかない。
だが、双葉はまだ違う。
殺して快楽を感じた後に、必ず後悔が押し寄せる。それはまだ壊れていない証拠だ。
しかしもう普通の人間とは違う感情がある。それをどうしたらいいのか分からない。
「なら、こわ――」
気づけば勝手に口が開いていた。何かを求めるように双葉は尋ねようとしていた。
それはグラハムの高笑いにかき消されてしまう。
「ダハハハハハハハハハハ!いやイイね。実にイイ。何事も初心を忘れないでおくことは大切だ。その心を二十歳を迎える寸前になっても覚えてるオレはなんと義理固い奴と称賛されるべきだろうか。よし恋人よ、初めての愛情表現としてオレを褒めてくれ」
ハイテンションに高らかと『愛』を欲求してくるグラハムだが、当然彼に注がれるのは罵倒の視線のみ。
こんな奴に訊こうとした自分が馬鹿だった、と双葉は無意識とはいえ先ほどの行動を恥じた。しかし自己嫌悪に陥りながらも、左手を伸ばしグラハムの喉元を押さえこむ。
だが片腕がダレてるせいで思うように力が入らず、結果的にグラハムの発言を許すことになってしまった。
「アレ?もしかしてアンタ、オレを殺そうとしてる?」
「その減らず口を二度と開かないくらいにはするつもりだ」
首を絞められてやっと命を狙われていた事に気づいたグラハムに、双葉は淡々と告げる。
どう考えても殺意しかこもってない言葉を、グラハムは都合良く解釈した。
「それって殺したいほどオレを愛してるってことか。ならオレも殺されたいほどアンタを愛さなきゃいけねェな。全力で向かってくる『愛』を全力で受け止められたなら、それは真の愛――そう真実の愛になる。さぁ遠慮はいらない。恋人よ、オレと一緒に『愛』を奏でよう」
「ほざけ!」
甘かった締めを強めようとしたものの、即座に
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