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【銀桜】8.破壊狂篇
第4話「破壊狂は敵を前にして世界を詩う」
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途端大喜びして跳ね上がるグラハム。
 彼が天井に掲げるのは、未知なる力を秘めているように紅黒く発光する玉だった。
 どことなく見た者を不安にさせるような淀んだ雰囲気を放つそれを、グラハムはまるで《ダイヤモンド(宝石)》を掘り当てたかのように目をキラキラさせた。
「さて、コレが今オレの手元に舞いこんできたことで悲しい話は嬉しい話へとチェンジした。すっかり忘れていた約束を思い出したと同時に果たすとは、何と奇しくも素晴らしい話だろう。ずばりベストタイミング、宇宙のすべてをかけた奇跡だと言っても過言じゃない。そんな悲しくも嬉しい奇跡の話をぜひしたいところだが、そろそろ戻らないとアニキにマジで怒られちまう。こりゃどう考えてもヤバいな。というわけで、さらば!」
 グラハムは紅い玉を強く握りしめたまま廃倉庫から飛び出して行った。
 その後も港に響いていた奇怪な笑い声は、しばらくして聞こえなくなった。
 静寂に戻った廃倉庫が返って不気味に思えてきた頃――
「アイツ、何?」
 やけに疲れた表情で銀時が尋ねた。
 港を迷って歩いていたら人の声が聞こえ、この廃倉庫に入った。
 そこで妹が襲われているのを目の当たりにし、無我夢中に闘ったのだ。
 本来ならお礼を言うべきところだろう。
 だが妹は無愛想に――けれどどこか疲れ果てたように――冷たく答えた。
「知るか。私にふるな」

「ただの破壊狂だろ」

* * *

 結局あの嵐のような金髪の少年が誰だったのかはわからない。
 この世界からズレたような異常な人間だったが、関わると碌なことになりそうにないのであまり深く考えないようにした。
 それから数日後。
 調査をしたあの日から金髪の少年は現れなくなった。廃倉庫から奇妙な音も声も聞こえなくなり、若干うやむやなモノを残しつつも依頼は無事に解決した。
 久しぶりの報酬に万事屋は豪華な料理に浮かれ、夜のかぶき町をはしゃぎまくった。
 それでまた金欠になるのがオチだが、そうした変わらない日常を過ごす中で、次第に今回のことは記憶の中から薄れていった。

 ただ一つ。

 彼女が受けた『影響』だけは消えることなく、また表に出てくることもなく、後に大きな変化をもたらしていく。

=つづく=

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