第4話「破壊狂は敵を前にして世界を詩う」
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だからこそ、ありとあらゆる事を楽しめるのだろう。
普通なら苛立たしい、こんな奇妙な事実さえも。
銀時は木刀を振りかざしてグラハムに向かって走る。
だが直後に銀色の円盤が目に飛びこんできた。それはグラハムが投げ放ったモンキーレンチ。その勢いよく回転する凶器が銀時を襲う。
とっさに身体を仰け反らせ豪速に回るレンチをすれすれのところで回避し、銀時は再び目標を捉えようとした。
「兄者!」
妹の呼び声で反射的に銀時は後ろを振り返った。モンキーレンチがブーメランのように曲線を描いて再び自分に迫ってくる。
だが銀時は避けず逆に木刀をバットのように構え、そのまま回転するモンキーレンチをグラハムめがけて打ち返した。
木刀に殴られて余計に回転数を増したレンチは、電動ノコギリばりの脅威となってグラハムの元へ返っていく。
しかし主の手を噛み千切ろうとする飼い犬を、グラハムは素手のまま手慣れた動きでモンキーレンチを受け止めた。
それからも人間離れした男たちの戦いが幾度も繰り広げられ――
「クク……クハハハハハハハハハ!」
吹き出して突然笑いだす。
地面を転げ回りたいのを堪えるようにグラハムは腹を抱えて爆笑する。
「ダハハハハハハハ!面白い。おかし過ぎて笑いが止まらない。困ったなこりゃ爆発しちまいそうなくらいオレの鼓動が鳴り止まない。この胸の高鳴りをどうやって抑えよう?壊すかァ。やっぱ壊すしかないだろ!」
そうしてグラハムは廃倉庫にドンと置いてあった鉄の塊へ向かう。
先刻双葉とグラハムが出会った時に彼が腰かけていた巨大な機械だ。それを宙へ投げ飛ばし、次にグラハムはモンキーレンチを振り回して永遠と鉄の塊を回し続ける。
その間に攻撃する隙はいくらでもあった。だが、あまりに人間離れした業(わざ)に圧倒され、銀時は呆然と立ち尽くし、双葉も見ているしかなかった。
そうこうしているうちに巨大な機械からは少しずつ少しずつ小さな鉄が、やがて大きな鉄の革が崩れ落ちていく。だがそれは無理矢理剥がされたモノではない。驚く事に一つ一つ丁寧にネジや金具が解体されていた。
大道芸人なら拍手喝采を貰ってもいいくらいだが、今送られてくるのは沈黙のみ。
それでも芸は続き、数分経たぬ間に巨大な機械は跡形もなく姿を消した。
「バラせた」
荒い息をもらすグラハムは、左右対称に並べて解体した部品を眺めながら満足そうに呟いた。
「超バラせた。一回も床に落とさないままバラせたよ。見たァ見たァ見ただろ。うわぁすっげースッキリしたけどヤバいヤバいヤバいヤバいぞまた笑いがこみ上げてきた。クハハハハハハハハァァ…ん?」
その時、解体された機械の最後の部品がストンとグラハムの手元に落ちた。
「あったァァ!」
それが目に止まった
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