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【銀桜】8.破壊狂篇
第4話「破壊狂は敵を前にして世界を詩う」
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表情を返す銀時。
「なーにフザけたこと言っちゃってんの。オレはそこまでダラダラ陰険がかった声してねーよ。糖分とってっからな!」
 何を根拠にしてるのか不明だが、銀時は自信満々に断言した。
 だが即否定されようと気にせずグラハムは、モンキーレンチをパシリと回して語る。
「感動だ、感動的な話をしよう。世の中には自分と顔が似てる人間が7人いると聞くが、声が似てる人間ってのは初めてだぞ。こんな出会いは人生の中で一つとして味わえるかどうかも分からない希少な体験だ。そんな体験を果たしたオレは千年に一度のラッキーボーイなのか?本当はオレすごい星の下に生まれた人間だったんだろうか!」
「ギャーギャーギャーギャーやかましいんだよ。ハッチャけたい年頃ですか。なに興奮してんですか。若者だからって十五の夜みたいに暴れ回っちゃいかんですよ。少しは人の迷惑考えて行動しろ」
 普段ぐうたらして周囲に迷惑かけてる兄者が言うなと、双葉はツッコミたかった。とはいえ二人の口争いが巻き起こる中で言ってももみ消さるだけなのでやめておいた。
「ま、声が似てるのを抜きにしてもだ」
 パシリとモンキーレンチを手で鳴らして、グラハムは銀時を改めて見る。
「こうして逢えたのも何かの縁だ。それを記念してお互い仲良く手を組もうじゃないか。まずその手始めにお前、負けろ」
「ああん!?」
「オレはもう二度もお前に《レンチ(攻撃)》を受け止められた。正直驚いて自分にガッカリしたよ。だがその分お前は勝利の余韻に浸れてさぞ気持ちよかっただろう。お前だけ幸せでオレだけ悲しみに暮れるなんて、こんなの万物平等を主張する世の中に対して不公平だ!
 それで、だ。喧嘩両成敗のもと人類皆平等を目指して、ここでお前がオレのレンチに二度ぶたれて負けてくれれば何もかも全て公平に終わる。それは世界が望むラブ&ピース、そうラブ&ピースだ!」
「なにコイツ?もうキレていい?銀さん我慢の限界なんですけどォ!」
 理に適ってるようで無茶苦茶な発言によって、ついにシビレを切らして振り下ろされた木刀がモンキーレンチとぶつかり合う。
 その後も何度か激しく衝突し合う銀の棒と木の棒。
 そんな喧嘩し合うグラハムと銀時を眺める双葉は、本人達以上に思い知っていた。

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――この二人、物凄く似てる……。
 声だけじゃない。
 寝ぼけたような半開きの眼。長ったらしい口調。呆れるほどの向上心のなさ
 だるさを放つ雰囲気に性格や思考もそのまんま似ている。
 銀時は絶対に認めたくない事実だろうが、双葉は案外すんなりと納得していた。
 この短い時間で嫌というぐらいグラハムに兄と同じモノを感じていたからだ。
 ただ、一つだけ違う点がある。
 それは『狂気』。
 グラハムは高杉と同じ狂気を持っている。
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