第4話「破壊狂は敵を前にして世界を詩う」
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ム缶の上に飛び乗り、前髪に隠れていない片目で銀時を見下ろして言う。
「生まれた小鳥たちは巣の中に小さな家族愛を実らせるが、いつかは巣立ちの時が訪れる」
しみじみと語るグラハムは一呼吸して、そしてモンキーレンチで銀時の頭を指差した。
「さぁとっととその頭から小鳥の《生命(いのち)》を巣立たせてくれよ。じゃないと――」
「!?」
跳躍。グラハムのやせ細った身体が宙に浮かんで
「盛大に壊せないだろ」
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黒い笑みが落ちる。
同時に銀時の頭めがけてモンキーレンチが振り下ろされる。
即座に構えた木刀に衝撃が走り、激しい音が廃倉庫に木霊する。
鋼鉄の打撃をくらった木刀はそのままへし折れそうに見えたが、驚くことにヒビ一つ入らずモンキーレンチをしっかり受け止めた。
金と銀の髪が一瞬触れ合うと、二人は後方へ飛んで互いに距離をとる。
「ほほう、オレの一撃から逃げず正々堂々と完璧なまでに受け止めるとはお前凄いな。英雄を手にした勇者と称えよう。でもぶっちゃけソレ痛いだろ」
小刻みに震える銀時の手を指差して、グラハムが歪んだ笑みで尋ねる。レンチの攻撃を完全に防いだものの、木刀から伝わる衝撃は凄まじいようだった。
「これはちげーよ。携帯のバイブが鳴ってるだけだから」
実にしょぼすぎる言い訳。だがグラハムは嘲笑するよりも称賛を述べた。
「お前も凄いがオレのレンチに直撃しても折れないその木の棒が遥かに凄いな。頑丈すぎるにも程があるそれは何だ」
「修学旅行で買ったおみやげだ」
へっと短く笑って吐き捨てる銀時の返事に、グラハムは目元を押さえて大笑いした。
「ダッハハハ!お前本当におもしろいな。おもしろすぎて笑いがワクワクに変わったぞ」
「こっちはテメェのせいで頭ン中ぐちゃぐちゃ不機嫌だコノヤロー」
グラハムの笑い声と銀時の怒声が飛び交う中で、すっかり枠の外へ弾き出されてしまった双葉はただ見ているしかなかった。
本来ならまたそこらの鉄パイプを拾うなりして銀時と共闘すべきだろう。だが、間の抜けた会話のせいですっかり緊張の糸がほつれてしまい身体に力が入らない。
実は兄が現れて知らず知らずのうちに安心しきってしまったせいもあるが、彼女にその自覚はなかった。
それはさておき、傍観者になったことで双葉は忘れかけていた『違和感』を思い出していた。
グラハムと出会った時から感じていたもの。銀時が乱入して来た事でさらに大きくなった。
この二人が並ぶとかなり『違和感』がある。
それが何かと聞かれれば、双葉も答えに困った。
しかし、その『違和感』に真っ先に気づいたのは、意外にもグラハム本人だった。
「おうっと、驚きがまだ一つあった。オレたち声似てないか?」
グラハムの発見に、ハァと呆れた
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