放浪剣士
魔女の血を継ぐものT
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彼女はくすりと笑い、そう呟いた。
村へ入ると、やはり兵士にあれやこれやと聞かれるのは私だけだった。
兵士どころか、大人も子供も誰も彼女の事など気にもとめはしない。
「今日の宿を探しましょう」
そういえば、もう日も落ち始め空も暗くなり始めていた。
村に一つの小さな宿屋。
やはりというべきか、部屋は駐屯する兵士にその殆どを使われ、残った部屋も運悪く旅の者でいっぱいだという。
「困ったわね」
本当に困っているのだろうか?
彼女の声色からは全くそのような感情は感じられない。
途方にくれた私達に声をかけたのは意外な人物だった。
「こんばんは、もしかして宿がなくてお困りですか?」
小さな身の丈に、この村には似つかわしくない、まるで貴族の子であるかのような金色の髪をもつ少女。
こんな時間に。
その疑問をかき消すかのように、少女は驚くべき事をしてのけた。
「お姉さん、どうしてそんなに驚いているの?」
少女には見えて…いや気付いていたのだ。
魔法でその存在感を極限まで薄め、普通ならば話し掛けられなければ気がつくはずもない彼女に。
「あなた、魔女ね」
少女を見下ろす彼女の瞳は殺気すら感じられるほどに冷ややかだった。
しかし、そんな視線も幼さ故かまるで気が付かないかのように少女は答える。
「まじょ?私はアリスっていうの。よろしくね」
屈託のない笑顔。
これほどまで幼くとも、このアリスと名乗った少女は世界へと災いをもたらす魔女なのだろうか?
「お家に行きましょう。遅くまでお外にいると、怖い怪物が私たちを拐っていくのよ」
私達二人の袖を引っ張り促すアリス。
仕方がない―――。
どうせ、宿もない。
それに、これほどに幼い魔女になにかできるとも思えない。
彼女も本意ではない、といった様子だがアリスに引かれるがまま、その家へと向かった。
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