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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
炎夏と暗幕
第百二十幕「重力に引かれたこころ」
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会いたがっています」
「まぁ、そうですの?では宇宙の旅を終えてもスケジュールに余裕があれば、そのようにします」
どうだろう。何の変哲もない会話に恐ろしいまでの悪意と歪みを感じないだろうか。セシリアが母親からの手紙を読みもせずに破り捨てていた事を鑑みれば、どれだけ二人の仲が歪んでいるかがよく分かる。なお、セシリアは家に帰る気は殆ど無いことを母は文脈から感じ取っている。
これで互いの意志がほぼ完全に疎通出来ているのだからおかしな話だ。
(ああ、お嬢様……これ以上奥様を煽らないでくださいませ……!)
(我等護衛一同、お嬢様が『それ』をやるたびに八つ当たりを受けるのですが……!)
(旦那様にも飛び火しているのです!どうか、どうかそれ以上はぁ……!!)
後ろに控えているオルコット家の護衛兼召使いメイドたちが頭を下げたまま胃を痛くする。
セシリアは当然そのことに気付いているし、彼らが悪くない事は知っている。しかし、その為に母親に譲歩するのは「セシリア」の気位が許さない。絶対に退いてなるものか、という不動の決意を彼らの手で動かすのは無理らしい。
(ああ、昔はお嬢様もあんなに可愛かったのになぁ……)
(何も親子揃ってそんな頑固なところまで似なくとも……)
「あら、何か進言したいことでも?」
「あらあら、それはわたくしも興味がございますわ?」
「「いえ、何でもありません!!」」
この勘の鋭さこそが最も恐ろしいところである。藪をつついてヨルムンガンドを出したくないメイドは、即座に二人の「来月の給与査定を楽しみにしておけ」と言わんばかりの視線を無難に避けることにした。
ともかくこの家族の会合は、周囲の胃に悪い。
お願いだから早く終わってくれ、とメイドたちは内心で叫んだ。
= =
チームというのは素晴らしい。同じ目的に違う思考を持ち、互いの想いや熱意を言葉に乗せて交換し合い、多用なアプローチで夢を追求する。歴史は一握りの人間が創るのではなく、大勢の人間が創り上げた歴史の中で一番目立っている人間が祀り上げられているだけに過ぎない。
歴史には、当事者にしか解らない世界がある。
セシリアは自分がその当事者になったことを実感しながらティアーズを通して動くマニュピレータの感触を確かめた。例えこの場で最も脚光を浴びているのがセシリアだけだとしても、この宇宙船を作り上げたのは間違いなく母国で宇宙を追い求めたチームだった。
「世界最大のオートクチュールにして、世界初のロケット不使用有人宇宙船……『クイーン・メアリ号』……その最初の乗員になれるなんて、人生史上最高の瞬間だわ……」
今は誰もセシリアの独り言を聞いていない。あのですわ口調も今はする必要がない。
激
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