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逆さの砂時計
いつか見た姿
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気に入りが手に入らなくて、拗ねてしまったのね。可愛い……」

 悪魔の女を適当に喰いながら、無駄に時間を流した。
 アイツ以上の魂は、世界中どこを探しても見つからない。
 人間を辞めさえしなければ、アイツは極上のエサのままだったのに。
 と、苛立ちは全部、他者に押し付けた。

「でも、 んッ……あの、人間の子供……そろそろ、レゾネクト様の目に、留まりそうよ? は……っ 殺されて、しまうんじゃ、ないかしら……?」
「……知ったことじゃない」
「冷たいわね……っあ ん、ぁあっ!」

 殺されてしまえ。
 レゾネクトにだろうと、神々にだろうと、人間にだろうと。
 命が尽きるまで、抗って。利用されて。裏切られて。
 テメェの無知と無力を嘆きながら、惨たらしく殺されてしまえばいい。
 それがアイツの本望なんだろうさ。

 ……そう、思ってた。

 なのに、あのバカ。
 本気で死にそうになりやがって。
 手助けなんぞしたくもなかったってのに。
 体が勝手に動いたんだから、仕方ないだろ。

「ありがとう、ベゼドラ」
「……クソッ! 次は知らないからな! 適当な仲間でも見つけてこい!」
「そうするよ。……本当は、お前が居てくれると、嬉しいんだけどな」
「頼るな、ど阿呆!」

 血を吐きながら弱々しく笑う姿なんぞ見たくもない。
 だから適当なことを言ったのに、アイツは本当に仲間を集めやがった。
 最初からそうしとけっつうの。

 それからしばらくの間は、アイツらが進む先を遠くから眺めてた。
 神々と人間の世界を繋ぐ唯一正式に認められた(かんなぎ)天神(てんじん)の一族の末裔が加わった辺りで、興味はほとんど失くしたが。
 異空間に吹っ飛ばされたと、噂に聞いて。
 そんなものかと落胆したのも覚えてる。



 目障りだったレゾネクトが消えて。
 当時の悪魔や人間共は浮かれ放題だった。
 どこへでも行って。
 好きな物を、好きなだけ奪い合い。
 同族争いをも激化させた程度には。

 アイツも、こんな連中に英雄と讃えられて喜んでるんだろうか。
 俺は人間共の滑稽さが可笑(おか)しくて堪らず、いろんな手段で遊んでた。
 そうこうしてる間に、あの忌々しいアリアに封印されたが……

「一番つまらない死に方だよな……。何が英雄だ、青天井の底抜けバカが。魂くらい置いていけっつーの」

 太陽みたいな金色の髪を揺らしてカラカラと笑う人間は、もういない。
 まっすぐ前だけを見てた橙色の眼差しは。
 そのせいでクソつまらない道に転落した。
 墓でもあればでかでかと『大バカ者』と書いてやるのに。
 記念碑すら遺してねぇでやんの。
 レゾネクトのヤツもまだ生きてやがるし。
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