いつか見た姿
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が何だったかと考えるよりもずっと、どうでもいいことだった。
向き合った相手を、一個の生命体として認め受け入れる、強い精神。
「そうだなあ……じゃあ、俺が戦死したらくれてやるよ。死んだら自分じゃどうにもならない物だしな」
惰弱な生物を護る為に生きようとした、大いなるバカ。
「それじゃつまらない。生きてるのを喰うのが旨いんじゃないか」
「我がままな奴め」
アイツの傍は不思議と心地好かった。
今思えば、それはロザリアに求めた物と、少しだけ似てる。
アイツは誰も否定しない。
俺も否定しない。
あるがまま、すべてを受け止める光だった。
「……っと。騎士団長殿がお呼びのようだ。また後でな、ベゼドラ」
軽く手を振って駆けていく背中を、ご苦労なことで。と見送ったのは。
その時で何十回……いや、何百回目だったか。
悪魔の声も届かない。
正面から惑わそうとしても揺るがない。
強すぎる生意気な人間の子供として見送った最後の背中を。
今もずっと、覚えてる。
「旅に出る?」
いきなり王立騎士団を抜け、王から貰ったとかいう剣を腰に下げて。
アイツは誇らしげに橙色の目を輝かせてた。
纏う空気は、最早人間のそれではなく。
「ああ。国王陛下より直命を頂いたんだ。お前も来るか? 上手くいけば、俺の魂を喰える機会もあるだろう」
「バカかお前。人間だからこそ、人間だったからこそ意味があったのに! そうまでして護りたかったのか!?」
アイツは人間を辞めた。
気付いた瞬間に湧き上がったのは、怒り。
種族なんか関係ないと。
脆弱な人間として生きながら弱さを受け入れてたアイツが良かったのに。
アイツは、アイツ自身を否定した。
人間では敵わない相手を倒す為に、人間であることを棄ててしまった。
そんな弱い魂に、価値なんかある筈もないのに!
「そうだよ。俺は弱いから、人間を辞めた。そうまでしても護りたいんだ。お前も含めて……この手と、この心に触れたもの、全部を」
人間の中から選ばれた人間。神々の威光と力を授かった勇者。
神々の祝福を得て人間じゃなくなっても、まったく変わらない笑い顔が。
無性に腹立たしく感じた。
「何が勇者だふざけるな! 俺はお前如きに護ってもらわなくて結構だ! 勝手に殺されてしまえ!!」
「! ベゼドラ!」
神も悪魔も人間も、口々に勝手な理想を語る。
くだらない。くだらない。くだらない。
そんな小さなヤツに成り下がったアイツなど、喰う価値はない。
俺はアイツを見限った。
「……最近、人間の世界に手を出さないのね、ベゼドラ?」
「どうでもいい」
「ふふ。お
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