第五話
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後で女としての幸せに気付けたのかもしれない。来世では愛しい人が出来て、交際し、結婚して。そんな人生がいい。
そんなことを思いながら、この人生に未練をのこしながら、私は意識を取り戻した。
「……ブ、ブヒッ」
「……え?」
意識を取り戻した時に、見たのは予想外の光景だった。
「このナイフ、切れ味すごい」
「き……ざ……ま、あの一瞬で……ど……」
デーブの喉元から絶えず噴き出る血液。オーク独特の緑色をしたそれはまるで噴水の如く溢れ出し、地面に水たまりを作っていた。
「ああ、やっぱり止まってたか。確信が持ててよかったよかった」
「なにが……どうなっ……ブヒ」
その場に膝をつくオーク。
私は動揺のあまり壁に身を預けたまま動けない。……え?
「……か、壁?どうして」
さっきまでいた場所と違う。
「あ、金髪おっぱいさん正気に戻りましたか。良かった。あともう少し待っていて下さいね」
そう言って彼は手元の、銀製器、だろうか。一本のナイフを手に持ってオークを見据えた。
「はぁ……はぁ……カヒュッ……きさま……許さないぞ。殺す。八つ裂きにする」
「怖いよ。でも殺されるのは勘弁。眠れなくなるのはいやだし、来なよデブ」
場に似合わない眠たげな表情でそう言った彼にオークは棍棒を握りしめた。
ま、まずいっ。彼が、危ない!
「死ねえッ!」
あまりにも速すぎる。
彼の目の前にはすでにその巨体と棍棒が迫っていた。私は動こう力を入れるが、満身創痍のこの身体は言うことを聞かなかった。
「ブヒヒヒヒヒヒッ!遅い!」
「に、逃げて!」
そんな私に、彼は一度だけ目を合わせて
「止まれ」
え……?
「……ぐぁ……ブヒ」
「金髪おっぱいさん、僕の名前は三鳩三戸。あなたの名前を教えてくれますか」
「……アリサ……アリサ・アンジェルジェ」
「あ、じゃあミトミハトです」
ドンッと、オークが倒れた振動を聞きながら、目の前の彼、いや、ミトミハトに私は自分の名前を絞り出した。
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