第二章
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「結構好きですけれどね」
「それで仕事は何をするんだ?」
「トラックの運転手を」
それをするというのだ。
「免許は持ってますし」
「そうか、じゃあお別れになるな」
「軍曹はまだ」
「ああ、俺はずっとだよ」
「軍隊にいますね」
「馴染んできたからな」
軍隊にというのだ。
「だからな」
「そうですか」
「このままいるさ」
ラスコーニンはこう話しつつだ、窓の方を見た。窓の外は雪が降りかなり高く積もっている。そしてだった。
基地の外の方に何かが見えた、毛深い毛を持ち長い鼻を持っている大きな生きものだ。
その生きものを見てだ、ラスコーニンはこう言った。
「あれなんだ?」
「ああ、何かいますね」
ブチャーノフも窓の外を見てその生きものに気付いた。
「そういえば」
「ああ、あれ何だ?」
「長い鼻に牙ありますね」
「変わった生きものだな」
「そうですよね、象に似てますね」
酔った目でだ、ブチャーノフは言った。
「大きさといい」
「そうだな、象がロシアにいるか?」
「熊じゃないんですか?野生の」
ブチャーノフは適当に言った、酔っているのでもう思考があれな状況になってしまっているからこその言葉だ。
「象じゃなくて」
「そうか」
「そうですよ、まあ飲みましょう」
「そうだな」
「野生の熊なら別にいいですよ」
当直士官のスコヴィッチも飲みつつ窓の外を見て言った。
「軍隊の出る幕じゃないです」
「はい、漁師の仕事ですね」
「要請が出たら出動して」
「それで、ですから」
「要請は出ていないですから」
だからとだ、二人も話す。
「このまま飲みましょう」
「熊なら問題なし」
「そういうことですね」
ラスコーニンとブチャーノフも言う、そしてだった。
三人は窓の外のその大きな生きものを熊と思って放置した、それは基地内の他の当直員達もであった。
その生きものを見てもだ、酔っていてだ。
熊か何かと思って気にしなかった、それで午前中は終わった。
スコヴィッチ達は昼食の後も飲んだ、ウォッカを心ゆくまで楽しみ。
トイレに行ってもだ、その施設のところを。
透き通った身体のしかも大戦中のソ連軍の軍服を着ている男を見てもだ、スコヴィッチは笑って彼に声をかけた。
「おトイレですか?」
「・・・・・・・・・」
男は応えない、ただそこにいるだけだ。
だがその彼にだ、スコヴィッチは赤ら顔で声をかけ続けた。
「冷えますからね、実は私も」
「・・・・・・・・・」
やはり答えない、だがそれでも声をかけ続けるスコヴィッチだった。
「飲み過ぎですね、トイレが」
「・・・・・・・・・」
「近いんですよ、お互い大変ですね」
こう話して用を足すのだった、そして。
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