第五章
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「我が帝国海軍のものよ」
「部長海軍マニアですからね」
「帝国海軍の」
「今も海自さん好きですし」
「海軍派ですからね」
「帝国海軍は最強無敵よ」
部長はこうまで言い切った。
「二人にも負けていないわよ」
「あの、海のお話は」
「止めてくれますか?」
戦車をダンボールに収めて定規とサイコロもなおした二人は部長にバツの悪そうな顔で言った、これまでの勝気さを消して。
「ドイツはちょっと」
「ソ連もその頃は」
「聯合艦隊なんてとても」
「空母なんて夢でした」
「ビスマルクは大和に勝てないですよ」
「ソ連軍の軍艦なんて」
とても、というのだ。
「海軍であんなに航空機充実していて」
「酸素魚雷強過ぎますよ」
「そりゃ陸軍は負けませんけれど」
「海軍は」
「そうよね、まあ海と陸は違うから」
部長は誇らしげに笑ったまま言うのだった。
「比較にならないけれどね」
「はい、ですが」
「海軍はどうにもならないです」
当時のドイツもソ連もというのだ、帝国海軍には。
「二式大艇にしても」
「戦略爆撃機まで持ってましたし」
「軍服の格好よさも旭日旗もね」
部長はこのことも言った。
「最高に格好いいわね」
「まあそれはですね」
「人それぞれですけれど」
「海軍は負けますから」
「絶対に勝てないですよ」
二人も海のことには弱かった、それで困るのだった。
それでだ、沙織はすみれに問うたのだった。
「そもそもすみれちゃん海軍の軍服とか持ってるの?」
「ソ連海軍の?」
「そう、あっちは?」
「全然」
すみれは首を横に振って沙織に答えた。
「だって当時のソ連軍って陸軍とね」
「空軍よね」
「そっちに殆どいったから」
「こっちもよ」
沙織も言うのだった。
「ドイツ海軍の軍服も格好いいけれど」
「それでもよね」
「デーニッツ海軍元帥がいても」
ドイツ最後の総統ともなった、その彼がいてもというのだ。
「それでもね」
「持ってないわよね」
「ええ」
二人共だった、それぞれの海軍の軍服は持っていなかった、もうプラモデルになると言うまでもないことだった。
それでだ、二人は部長に言った。
「海軍は完全敗北です」
「何もかも」
「日本にはとても」
「勝てないです」
こう言うしかなかった、ドイツもソ連も弱点があったことを認めるしかなかった。それでまた二人で話したのだった。
「海軍はね」
「勝負しないってことで」
「お話自体が出来ないし」
「そういうことでね」
こう話すのだった、海は二人にとっても二人の贔屓の軍隊にとっても鬼門であった。
困ったマニア 完
2015・3・
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