第六章
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「ひょっとしたら」
「しかし俺達は」
「何も出来なかったですよね」
「誰も助けられなかったけれどな」
「けれど、ひょっとして」
「ああ、鳥達から見るとな」
「助けてくれたってことなんですかね」
奥羽はその自分達に感謝の意を表す様にだ、円を描いて飛んでいるその鳥達を見上げつつ飯塚に言った。
「これは」
「そうなのか」
「ですから」
「それでか」
「こうして俺達の上を天使みたいに飛んでくれているんですよ」
「だとしたらいいな」
「我々は助けられたのか、出来たのか」
連隊長もだ、鳥達を見上げつつ言った。
「だとしたらいいのだが」
「そうですね、若しそうでしたら」
「本当にいいんですけれど」
周りの幹部達も連隊長に応える。
「それならば」
「いいのですが」
「被災者の人達や被災地の生きもの達、被災地自体が助かっていればな」
いいとだ、連隊長も言うのだった。
隊員達は皆空の鳥達を見上げていた、そして思うのだった。
「感謝の気持ちなら」
「若し俺達が力になっていたのなら」
「どれだけいいか」
「本当にそうなら」
こうしみじみと思うのだった、そして。
鳥達が去ってからだ、連隊長は再び戻ることを伝えた、車両を発進させて。
基地から戻った彼等だがその彼等にだ、防衛省から次々に被災地から手紙が来た。それは全て感謝の意を表すものだった。
その手紙を一枚一枚読みつつだ、奥羽は共に読む飯塚に感激しつつ言った。
「感謝してくれてるんですね」
「力になっていたんだな、俺達は」
「だとしたら本当に」
「嬉しいな」
二人はこれ以上ない感激を感じていた、連隊長も手紙を読み終えた後でだ、周りの幹部達に瞑目してこう言った。
「我々は幸せだな」
「はい、ここまで感謝してもらって」
「何よりです」
「助けになれたのなら」
「力になれたのなら」
幹部達も思うのだった、そしてだった。
隊員達は皆鳥達のことも手紙のこともだ、深く静かに喜ぶのだった。その救助活動、復興支援のことを。
自衛隊はこうだった、だが。
とある市民活動家あがりの議員が責任者を務める市民団体はだ、どうだったかというと。
少し落ち着いてから来て支援物資を勝手に止め自分達が送り届けたことにして手柄を独占しようとしてだ、被災地でもまともに動かず先に来ていた自衛隊の誹謗中傷を繰り返し。
そしてすぐに帰った、その彼等には。
上から無数の鳥の糞が来た、車はそれで汚れ。
震災地での彼等の一連の行動や発言が被災者達が落ち着いてインフラが復旧してからだ、インターネットで書き込まれその実態が暴露された。自衛隊の活動と比べるとそこには見事なまでのコントラストがあった。
空からのお礼 完
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