第二章
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そうでない命も多かった、隊員達は人も動物達も救ったがそれと同じだけいや彼等にしてみればそれ以上の失われた命を見た。
飯塚は奥羽にだ、朝食の乾パンをかじりつつ同じものを囓っている彼に言った。
「昨日お婆さんが亡くなった家族のところにな」
「行かれたんですね」
「そのことを伝えて。ホトケさんを見せたんだけれどな」
「悲しんでましたよね、ご家族の人達は」
「当たり前だ、家族が死んだんだ」
飯塚は苦りきった顔で奥羽に答えた。
「言うまでもないだろ」
「そうですよね、やっぱり」
「俺はお知らせしてな」
そしてとだ、飯塚は普通にしていれば端整で引き締まった顔で話した。
「それで横にいるだけだったが」
「遺族の方々は」
「もうホトケさんにすがりついて泣いてな」
「どうしようもなかったんですね」
「全く、こればかりはな」
災害はとだ、飯塚は言うしかなかった。
「どうしようもないな」
「いきなり起こってそして」
「人の命を奪っていくからな」
「とんでもないものだよ、俺達が出来ることは起こってからだ」
「それからですね」
奥羽は眼鏡をかけなおしつつ応えた。
「救助活動なんて偉そうに言ってますけれど」
「助けられないからな」
「ですね、死んだ人が一杯出ても」
「何なんだろうな、俺達のやってることは」
無力感に苛まれつつの言葉だった、飯塚の今の言葉は。
「死んだ人を見付けて家族の人にホトケさん見せて」
「何になるんでしょうか」
「飯とか出してもな」
「死んだ人はどうしようもないですね」
「死んだら確かにどうしようもないさ」
もうそれで終わりだというのだ。
「それでな」
「ですね、俺達じゃどうしようもないです」
「そんなことしても。本当に」
「何でもないですね」
「どれだけ死んだんだ」
「百三人らしいですよ」
奥羽はこの震災での犠牲者の今わかっているだけの数を述べた。
「それ位らしいです」
「百三人か」
「多いですよね」
「一人死んでも多いんだよ」
飯塚は苦々しい顔でだ、湯を飲んだ。生水は身体に悪いので一旦沸騰させたものを飲んでいるのである。
「ご家族にとってはな」
「ですよね、掛け替えのない人ですから」
「そういうものだよ、その人達が百三人だ」
「その倍以上の家族の人達が泣いている」
「多いだろ」
「はい、とても」
奥羽も苦い顔で応えた。
「少ないなんて絶対に言えないですね」
「そうだな、百三人か」
「本当に多いですね」
「その中に何人の助けられた人がいたか」
こうした言葉もだ、飯塚は出した。
「わからないな」
「俺達がもっと早く来ていたら」
「そして早く動けていたらな」
「見付けて救助出来たら」
「もっと少なくて済んだかもな」
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