2部分:第二章
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第二章
「それも覚えておくんだよ」
「蜂蜜は右手に」
「そう、楽しいことは右手にあるんだよ」
優しい目になっています。子供に話す目です。その目で、です。お母さん熊はミーシャに対して語りかけます。そうしているのです。
「わかったね。楽しいことはね」
「僕の右手にも」
「あるよ。ちゃんとね」
「じゃあ何かあったら」
ミーシャも自分の右手を見ます。その掌をです。そうしてです。お母さん熊に対してです。言葉を返すのでした。
「この右手を見て」
「頑張るんだよ、いいね」
「わかったよ、お母さん」
ミーシャはお母さん熊に笑顔で答えました。
「僕、何があっても頑張るから」
「その右手を見てだね」
「頑張るから」
「そうだよ。頑張るんだよ」
こうお話をしたのです。これはミーシャが子供の頃です。
やがてミーシャは大きくなりお母さん、そしてお父さん熊と別れてです。一匹で暮らす様になりました。
一匹で暮らしていると寂しさが募ります。もうお母さんはいないのです。それに狩りをするのも山の果物を採るのも何かと難しいです。
それで辛い思いをしました。けれどです。
ここでお母さん熊の言葉を思い出しました。それで。
右手を見ました。そこには蜂蜜の味があります。
そして楽しさも。それを思い出してです。ミーシャは自分に言いました。
「頑張ろう、楽しいこともあるから」
こう言って頑張るのでした。こうして一匹での暮らしを乗り切るのでした。
他にも色々と辛いことがありました。けれどです。
ミーシャはその都度自分の右手を見て楽しいことを思い出して頑張るのでした。そうしているうちに彼も大きくなって奥さんを迎えました。そうして。
子供ができました。ミーシャは自分の子供にこう言うのでした。
「いいかい、何か辛いことがあってもね」
「辛いことがあっても?」
「そうだよ。挫けたら駄目だよ」
お母さん熊に言われたことをそのまま言うのです。
「どんな悲しいこと、辛いことでもね」
「挫けたら駄目なんだね」
「そうした時にこそ楽しいことを思い出すんだ」
こう言うのです。
「いいね、絶対にね」
「楽しいことをって」
「蜂蜜を食べると美味しいし楽しいね」
「うん、とてもね」
こう言うとです。子供熊もわかりました。
そのうえでお父さんのミーシャの言葉にです。頷くのです。
「美味しいよ」
「その楽しさを思い出すんだよ」
これがミーシャが子供に言いたいことでした。
「いいね、そうした時にこそね」
「そうして頑張るんだね」
「そういうことだよ」
こう子供に告げました。
「わかったね、それが」
「わかったよ。僕何があってもくじけないから」
実際に強い声で答える子供熊でした。ミーシャは我
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