第三章
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「どういったものでしょうか」
「刀や槍に斧だとか、弓矢はありませぬ」
「そうですか、弓矢はありませぬか」
「火薬を使ったものもです」
「ではそれがし一人で充分です」
徐達は笑ってだ、長老に答えた。
「すぐにでも賊共を皆退治してきます」
「三十いるのですが」
「弓矢はないのですな」
「はい、襲われた村から命からがら逃げて来た者によると」
「ならば恐ることはありませぬ」
笑ってだ、徐達は言うのだった。
「全く」
「しかし。数が」
「弓矢も火薬もないのならそれがしにとってはどうともござらん。それでは何も恐ることはござらぬ」
「左様ですか」
「ですからそれがし一人で賊のところに行ってきます」
「ですがそれでは幾らでも」
心配だとだ、長老は言ってだった。
それで村の若い者達に粗末な鎌や鍬等を持たせて徐達の共にしてだった。そのうえで彼に賊の征伐に行ってもらった。
行く途中にだ、村の若い者達は口々にだ、徐達に言った。
「あの、その賊達はです」
「あまりにも凶暴で」
「人は皆殺します」
「ものも全部奪います」
「後には何も残さない」
「そうした連中です」
「だから尚更じゃ」
徐達は平然としてだ、心配そうな村人達に答えつつ先に進むのだった。
「放ってはおけぬ」
「しかしそうした賊が三十人程もいるのです」
「確かに弓矢はありませぬが」
「その様な連中にお一人で向かわれるなぞ」
「あまりにも無謀です」
「何、恐ることはない」
徐達の返事は変わらない、それも全く。
「御主達は見ていてくれるだけでよい」
「徐達様の戦いをですか」
「賊とのそれを」
「所詮村を襲って暴れるだけの者達、何ということもない」
「ではその鞭で、ですか」
「それだけで」
「実は弓矢なり刀を投げるなりも出来る」
所謂飛び道具も使えるというのだ。
「そうしたこともな。しかし弓矢もない様ならな」
「別にですか」
「何もありませぬか」
「だからじゃ。見ていてくれるだけでよい」
これが村人達への言葉だった。
「そういうことでな」
「では、ですか」
「このままですか」
「我等は見ているだけで」
「徐達様だけが」
「戦う」
こう言ってだった、村人達の案内を受けて。
徐達はある場所に向かった、賊達の隠れ家に。
そこは誰もいなくなった村だった、その近くに来てだった。村人達はいよいよ怯える顔になってそして徐達に言った。
「ここです」
「ここに賊共がいます」
「では我等はです」
「ここにいていいのですな」
「賊と戦わずに」
「言った通りじゃ、見ていてくれ」
徐達の言葉は変わらなかった、それも全く。
そしてだ、村人達をそこに置いてだった。彼はその廃れた村今は賊達が根城としているそ
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