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熊の右手
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第一章

                             熊の右手
 ミーシャはです。お母さん熊に言われました。
「いいかい、ミーシャ」
「どうしたの、お母さん」
「蜂蜜だけれどね」
 ミーシャの大好物です。彼だけではなく熊なら誰でも大好物です。
 その蜂蜜のことをです。お母さん熊はミーシャに話すのである。
「ただ手に取って舐めるだけじゃないんだよ」
「えっ、蜂蜜って舐めるだけじゃないの?」
「そうだよ。それだけじゃないんだよ」
 こうです。ミーシャに話すのです。
「蜂蜜は美味しいよね」
「うん、とても美味しいよ」
 蜂蜜の美味しさはとてもよく知っています。熊ならです。
「僕あれが一番好きだよ」
「そうだね。それでね」
「それで?」
「蜂蜜を舐めるとね」
 こう言うのです。ミーシャに対してです。
「美味しいね。甘いね」
「そうだけれど」
「その味を忘れられるかい?」
 ミーシャに対して話す言葉はこうしたものでした。
「忘れないね。ミーシャも」
「うん、忘れないよ」
 実際にそうだと。ミーシャはお母さん熊に答えました。
「絶対に忘れないよ」
「そうね。忘れないね」
「美味しい味って忘れられないよね」
 無邪気な笑顔で、です。お母さん熊に答えるのでした。
「何があってもね」
「そうだね。楽しいね」
「うん、楽しいよ」
 その味を味わうだけでなくです。思い出すことも楽しいのです。ミーシャはお母さん熊に対してです。こうお話をするのでした。
 ところが、です。けれどなのでした。
 お母さん熊はです。ミーシャにこう言いました。
「あのね、ミーシャ」
「何なの?お母さん」
「楽しいことはいつも覚えておくんだよ」
 笑顔で。ミーシャに話すのでした。
「いいね、いつもね」
「いつもなの?」
「そう、いつも覚えておくんだよ」
「どうしてなの?それは」
「生きているとね。楽しいことばかりじゃないから」
 それをです。ミーシャに話すのです。
「だから。辛い時や悲しい時にね」
「その楽しいことを思い出すんだね」
「そう、思い出すんだよ」
 ミーシャに話します。このこともです。
「いいね、思い出すんだよ」
「辛い時や悲しい時に」
「楽しいことを思い出すと頑張れるから」
「だからなんだ」
「そうだよ。わかったね」
 ミーシャのまだあどけない顔を見て。そうして話すのでした。
「それじゃあね」
「そうだね。何があってもね」
「頑張るんだよ、何があってもね」
 そしてでした。またでした。
 お母さん熊はミーシャに話を続けます。今度の言葉は。
 自分の右手を見せて。ミーシャにこう言ったのです。
「蜂蜜は右手で取って食べるね」
「うん、そうだよ」
 ミーシ
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