例えば箒にはこんな未来があったんだろ
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「ひっく……同期は次々に結婚する!ISまでもが結婚する!最近は円の奴まで一丁前に色気づいて鼻歌を歌いながらデートの予定を立てている!!どいつもこいつも幸せになりおって………今まで結婚は人生の墓場などと思っていたが、正直羨ましくてしょうがないんだ!!お前の所為だぞゴエモン!!」
「な、なんで俺?」
「お前と結婚したオウカが!ジェーンが!箒が!お前の家の子供たちや家族が全員そろって幸せそうにしてるのがどうしようもなく羨ましいんだよっ!!」
「おおおおちおちつおちついててててて!?」
キッ!と睨みつけてきた先生がガクガク体を揺さぶる。基本的に先生が飲むのに付き合う時は独りで来るため割って入る人がいない。まって、やめて、酔う……酔っちゃう……!出ちゃうから!!
「今更3人が4人に変わっても大差ないだろう!?私も……私も幸せにしろ!!……お前なら分かるだろう。お前が家族を背負っていたように、ずっと一夏を背負って生きてきたんだ。一夏が一人前になった今……私も私の幸せが欲しいんだ」
どんどん勢いの消える声は、最後には少女のようにか細かった。そのまま力なくゴエモンにもたれかかった千冬は、静かに涙を流す。「お前なら分かるだろう」、か……。正直に言えば、分かるかもしれない。ジェーンに秘密を知られたときも、オウカに告白しきった時も、俺は心のどこかで「もう楽になっていいのかな、幸せになっていいのかな」って自分に許しを乞うてきた。
先生は、誰にも弱みを出そうとしない。本当の意味で自分の本音をさらけ出して許しを乞える相手も今はいない。おりむーや束さんには、先生は甘えはしても縋れないのだ。
ああ、駄目だ。箒ちゃんの時もこうだったし、誰の時もそうだったけど……先生にもやっぱり笑っていて欲しいよ。本当の意味で先生を許してあげたい。いや――
「千冬さん」
「ごえもぉん……」
「IS委員会に頼み込んで、四人目の花嫁を受け入れる許可を貰いに行きましょう。二人でちょっとワガママになっても、皆許してくれるはずです」
「お前らの家族は……それでもいいのか?」
「俺に甘えて良い順番はジェーンが決めてるんです。次に家族が増えた時にも揉めないようにってね?」
千冬さんは潤んだ瞳で俺の顔を見上げ、静かに俺の顔を自分の顔に引き寄せた。
29年分の我慢と純潔が籠った口づけは、どの花嫁のキスより情熱的だった。
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