例えばこんなゼゼーナンの怪はどうだろ
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すくい上げる。その時のゼゼーナンの顔に――あどけない少年の笑顔が重なった気がした。
『ありがとう、タテナシ。もう、ぼくはつらくないよ』
「………じゃあ、最後に特別サービスで教えてあげる」
『え……?』
「わたし、本名は『刀奈』って言うの。特別な人にしか教えない秘密なんだからね?」
『………ぼくが、トクベツ?』
「ふふ……特別。びっくりした?『――――』くん」
調査の結果判明した、きっとゼゼーナンの中にいるであろう子の名を呼ぶ。
ゼゼーナンはしばらく微動だにしないまま私の掌に座っていた。
永遠とも思える時間の中で、ゼゼーナンは全ての未練が晴れたように目を細める。
ふと、外の雲の切れ目から月の光が部屋に差し込んだ。
『ぼく、カタナのことがだいすきだったよ。――さよなら』
それを最期に、ゼゼーナンは一言も鳴かなくなり、ぴょんと掌を飛び下りて水槽に戻り、そのまま眠ってしまった。死んではいないが、その姿には先ほどまでの理性的な面影はない。
ふと月を見上げると、小さな一筋の光が空へと登っていくのが見えた。
「ゼゼーナン、いえ、『――――』くん……天国でお母さんと仲良くね」
楯無はその光が見えなくなるまで、ずっと笑顔で見送りの手を振り続けた。
この日以来、ゼゼーナンは『カエリンガル』に受け答えすることは二度となく、普通のガマガエルになってしまった。相変わらずゴエモンの顔を見るとキュッキュッと鳴くが、あれはもう唯の癖なのだろう。
そして普通になったゼゼーナンとは打って変わって、楯無はすっかりカエル嫌いを克服して生徒会室から脱走できるようになったそうだ。
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