例えばこんなゼゼーナンの怪はどうだろ
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は、いつものように水槽の中で佇んでいた。
私は、テーブルの上に置いてあったカエリンガルを手に取って、起動させた。
「ゼゼーナン、貴方は……誰なの?」
『もう、おもいだせない。でも、ぼくはニンゲンだった』
キュッキュッと、ゼゼーナンが鳴く。いや、ひょっとしたら哭いているのかもしれない。
「どうして貴方はこんな姿に……いつから助けを求めていたの?」
『いのちをかるくあつかったバチだって……いわれた。すごくこわくて、かなしくて、コウカイした。それからずっと、たすけてってさけんでた』
胸の奥が締め付けられるような感覚。普段の、カエルに相対した時の苦手意識とは全く違う――ああ、彼は人間なんだと思えるような素直な感覚だった。
「どうしてゴエモンの前に現れたの?それに、ずっと大人しく飼われてたのはどうして?人間扱いされなくて辛くはなかったの?」
『ゴエモンのてが、あったかかったから。コウもヒカルこも、ホンネもわらいかけてくれて、ごはんをくれた。かえるのスガタだったけど、はなしかけてくれるのがうれしかった。いまも、うれしい』
どうして、今も嬉しいんだろう。苦しいって、助けてって言っていたのに。
それに私はいつもゼゼーナンの事を避けていて、怖がっていたのに。
「どうして……?」
『タテナシと、おはなしできるから。ほんとうにつたえたいことを、ほんとうにつたえたいひとにおはなしできたから――タテナシ、ぼくのおかあさんとにてるきがしたから、ほめてほしかった』
「……!!それじゃあ、あの時水槽から脱走してスパイを睨んでたのは……!!」
『ゆうきをだして、がんばったの。タテナシがよろこぶとおもって』
だとすれば、自分は何と残酷で愚かだったのだろうか。
こんなにも一生懸命になっている相手に対して「怖い」とか「苦手」とか勝手な事ばかり考えては避けてきて、ずっとゼゼーナンの声に気付きもせずに。ゼゼーナンのメッセージを受け取ったときだってそうだ。私は悲鳴を上げて倒れてしまった。
気が付けば、頬を涙が伝っていた。
「ごめんなさい、ゼゼーナン。謝って済む話じゃないけれど、それでも……ごめんなさい………!」
『あやまらないで。これもかえるにイジワルしたばつだから。それよりも、タテナシ。さいごにヒトツだけたのみがある』
ゼゼーナンの言葉を、私は待った。
『もう、ぼくのイシキはきえるんだとおもう。バツにはいつかおわりがくるから、バツがおわったぼくはもうすぐタダのかえるになってしまう。だからそのまえに――タテナシのテノヒラにのりたい』
「………………うん」
不思議と、もう迷いはなかった。触った瞬間、想像以上にやわらかくて一瞬手を引いてしまったが、苦しくないようにゆっくりとゼゼーナンを掌に
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