第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
なお珠希はBluesである
[10/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
すると、2年男子は大きく息を吐いて身体から力を抜いた。
「まあいい。お前らは早く消えろ」
「えっ? でも……」
「どうせこの3年の奴らが先に手ぇ出してきたんだろ? こいつらのガラの悪さは教師も知ってるから何とでも言い訳できる」
明らかに敵対するどころか、むしろ珠希と星河をかばうような提案を示してくれた2年男子。目測はさておき、予想外の展開になった珠希は戸惑いを隠せなかったが、見ず知らずの2年男子はまるで一部始終見ていたかのように推測をしていた。
実際、珠希が不利にならないよう真実を加工・編集して一連の流れをかいつまめばこの男子生徒の言うとおりである。
「で、でもそれじゃあ――」
「それに、こいつらとしてもまさか1年の女子にブチのめされましたなんて恥ずかしくて言えないだろ」
2年男子のこの発言内容に対して、何をそんなに恥ずかしがる必要とかあるんだろう、と珠希は首を傾げたくなった。
男より強い女なんてどの時代、どこの国にもいる。なお、ここで言う“強さ”とは武力に限らず、深謀遠慮をめぐらせられる頭の回転と大胆不敵なまでの決断力・実行力・行動力のことだ。ハニートラップに頼らずして馬鹿な男を思いのままその掌で転がすくらいの気概だ。
「まあ、新入生相手に絡んでったこのバカたちの責任のほうがデカいしな」
状況をざっと見ただけの2年男子はそう言ってくれたものの、実のところ、もっとも責任を負うべきなのは空手と柔道の有段者のくせにその技術を喧嘩に使った珠希だった。過剰防衛に関しては逆に珠希が暴行罪に問われる違法行為である。
しかも高校に提出した履歴書に珠希は黒帯であることを書いていない。
釈明すると決して詐称ではない。空手と柔道の段位が進学校のどこに必要なのかとチラッと思ったりはしたが、中学時代に進路指導の担当教師から受けるよう言われた漢検(2級)と英検(2級)と、ついでにTOEIC(850点)の結果と点数を書いたら記入欄が埋まってしまったためだ。決してわざとではない。あくまで文字を大きく見やすく書いたためだ。
――それくらい学力あってどうしてもっと上を目指さないのかといえば、理由は単純明快。珠希がいなくなると珠希の家庭は間違いなく崩壊するからである。何より基本的に小心者のこの長女が赤の他人に囲まれて生活できるわけがなく、いっそ留学して背水の陣に追い込んで裸一貫から始めさせたほうがいいレベルである。
「っつーことで、お前らはいい加減ここから消えとけ」
「――っ、……はい」
邪険とまではいかなくても、今度も相手は曲りも何も先輩である。ここまで言われてしまえばあとは引き下がるしかなかった。しかもここで不要な意地を張り、差し出された助け舟にケチをつける真似をするのも失礼だった。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ