第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
なお珠希はBluesである
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われたとなれば珠希はこの世の終わりがごとく地面に手と膝を付き、綺麗に「orz」の人文字を作れる自信があった。
「これは……その、なんていうか……」
――事実、何とも言い訳しようがないのがこの現実である。
残念ながらこの隠れ武闘派ガチオタ小心者少女は息を吐くように嘘をつける体質でも民族でも人種でもない。見苦しい言い訳するくらいなら腹を括り、きっぱりはっきり怒られることを望むタイプだが、せめて、せめて高校生になって初めてできた友達にだけは嫌われたくないのが本心である。
ヤバい泣きたい逃げたい死にたい。
てかいっそここで死んどきたいレベルなんだけど!?
自分の呼びかけに対して反応を返してくれず、呆然と立つだけの星河に対し、ついにプチパニックに陥った珠希が思考のデフレスパイラルにハマり始めたとき、不意に背後から地面を踏みしめる音が聞こえた。
「――っ!?」
「何やってんだお前ら?」
他人の気配と音に振り返ると同時に星河をかばうように身構える珠希の前に姿を見せたのは、一人の男子生徒。先程逃げていった3年生男子がラスボスでも召喚したのかと思ったが、尻尾巻いて逃げていった3年生男子たちとは違い、この男子生徒は制服をちゃんと着こなしており、何より襟元のバッチが2年であることを示していた。
「いえ、ちょっと……」
時間を稼ごうと曖昧に言葉を濁した珠希だが、突如現れた2年男子の視界から星河を隠そうと構えながら、早く昴が教師を呼んできてくれないかと思った。多少ではあるが、護身術をはじめとした体術・武術を習得する際に自然と身に着いていた相手の実力を測る力が珠希の脳内でアラームを発している。
この2年男子は間違いなく、自分でも敵わないくらい強い、と。
身長は昴と同じくらい、若干伸びた短い黒髪に、じっと珠希と星河を見据える鋭い目つき。制服の下がどれだけ鍛えられているのかまでは推測できないものの、観察しているだけでも珠希は自分の力量不足を思い知らされるだけだった。
「……これ、お前らがやったのか?」
足元で気を失っている三人の3年男子に視線を送ると、その2年男子は尋ねてきた。
「あたしがやりましたけど、何か?」
「お前が? へぇ……」
珠希が素直に答えると、2年男子はどこか納得したような、感心したような言葉を漏らす。
一般的に考えて女性1人が男性3人に喧嘩して勝てるはずがないと思われるのは仕方ないが、むしろ珠希の背後に隠れているなよなよした男子にこそ3人の男性相手に喧嘩して勝てるわけがないとこの2年男子は感じたようだった。
だがそれはそれで説明の手間が省けてありがたいと思うと同時に、珠希の、この2年男子の実力の目測は間違っていないことを確信させる。
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