第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
なお珠希はBluesである
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「……あ、星河くん発見」
「はあっ!?」
ここは私立稜陽高校の校舎内、2階から3階に上る階段の踊り場。
窓の外を指差す珠希にダッシュで駆け寄った昴はそこに自分の視線を送る。
そして次の瞬間、昴の視界には5人の男子に囲まれ、武道場の陰に連れ込まれようとしている大切な幼なじみの後ろ姿が見えた。
……この女、よく見えたな。
後に高校生活最初となる身体検査で視力1.5を叩きだすことになる昴は、クラス内でも“ぼっち”の少女の視力の良さに驚きながらも、身体は自然と階段を駆け下りようとしていた。
「ちょ、昴くん! 今から追いかけるの?」
「たりめーだ!!」
見るからにあれは脅迫と恐喝の前兆だ。過去にも同じような目に遭っているからわかる。暴力が嫌いで、その行使も望まない星河が無事でいられるわけがない。そしてそれは何より昴にとっては人生の汚点といっても過言ではなかった。
愛息を傷つけられて星河の親や親類が黙っているわけはないが、そんな大人の世界の事情や方法などどうでもいい。昴が星河を守ろうとするのも決して義理とか使命感からではない。大切な親友だからだ。ただそれだけだ。
「俺が星河を守る! 珠希は先に屋上行ってろ!」
「待って昴くんっ!」
踊り場の窓の前に立つ“ぼっち”少女にそう言って、昴は星河の後を追いかけようとしたが、それは珠希の声によって制止されてしまった。
「っ! なんだ竜も……んっ!?」
珠希に制止され苛立った声で返す昴だが、次の瞬間、その苛立ちも言葉も、思考そのものが綺麗にどこかへと吹き飛んでしまった。
「今からじゃ間に合わないよ」
「ちょ、竜門。お前……」
振り返った昴の眼前、締められていた窓を開けた珠希は窓枠上部を手で掴み、スカートだというのに窓枠の下に片足を掛けていた。まるでアクション映画の飛び降りシーンでもするかのような珠希の体勢に、その恰好はパンツ見えるぞ、などというツッコミは浮かばなかった。
「あたしが行く。昴くんは先生呼んできて」
「ちょ……っ! おま、ここ2か……っ!!」
「それじゃお願いっ」
そう言うと、昴の声にも振り向かず珠希の身体は窓の外へと消えてしまった。
「……あのバカ!」
急いで踊り場まで駆け上がり、昴は窓の下を覗く。2階と3階の踊り場、高さにして7mから8m近い高さから何の装備もなしに地面に飛び降りればよくて打撲、悪くて骨折だ。
このときばかりは星河よりも珠希の身を案じた昴だったが、踊り場の外には学食向けの食材の納品でもあったのか、大型トラックが停まっていた。
「あの女、トラックの荷台に飛び降りやがったのか……」
アクション映画のワンシーンで歩道橋
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