3部分:第三章
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第三章
「如何ですか?」
情事が終わった後で沙耶香は隆美に問うた。ネクタイは外しその胸がカッターからはだけているが服は一応は着ていた。その手には煙草がある。
「女同士の味は」
「今までこんなことは知りもしませんでした」
隆美は沙耶香の横で服を整えていた。その頬がほんのりと紅に染まっている。
「けれどこれは・・・・・・」
「よいものでしょう?」
沙耶香は彼女にまた問うた。
「女同士もまた」
「主人や子供は裏切っていないのですね」
「何故裏切りになるのでしょう」
その手に煙草の煙をくゆらせながら言う。
「貴女は女と寝た。男と寝たわけではないのに」
「男でなければいいのですか」
「そうなのですよ。男もまたいいものですが」
沙耶香は男も知っている。男も女も知っているのだ。
「女同士は。不貞にはならないのですよ」
「詭弁ではないのですか?それは」
だが隆美にはまだ心に引っ掛かるものがあった。
「本来ならば一人の方にのみ身体を委ねる筈なのに」
「では聞きますが男に寝取られて騒ぐ話はありますね」
「ええ」
こんなものは昔から何処にでもある話である。性が逆になった場合もまた然り。それこそ昔から人類の大きな話の一つである。これからもそうであろう。
「ですが自分の女が女と寝て騒ぐ男の話は?」
「聞いたことがありません」
隆美は答えた。
「そうですね。では自分の夫が男と寝て怒る妻の話は?」
「それもないです」
普通はないものだ。かっての日本やギリシア等では同性愛は普通であったがそれでもこうした話はない。これは夫婦の営みとはまた別の世界の話であるからだ。
「そういうことですよ。それに」
「それに?」
「貴女も目覚めたのではないですか?」
「えっ」
そう言われてギョッとする。
「この快楽に。その証拠に」
「それは・・・・・・」
「素敵でしたよ」
隆美に顔を向けて妖しく笑った。
「楽しませて頂きました。そして貴女も楽しんでおられましたね」
「・・・・・・・・・」
「ですがこれでおわかりになられた筈です。貴女もまた女の肌の悦びを知った」
「・・・・・・はい」
「ではおわかりですね。彼女達がどうして女に溺れるのか」
「ええ」
「ではお話をお伺いしましょう。詳しいお話をね」
「わかりました」
隆美はそのうえで沙耶香に話しはじめた。一体何が起こっているのかを。話を聞いた沙耶香はその夜緑のステンドガラスがカウンターにあるバーで飲んでいた。飲みながらそこで隆美から受け取った写真を見ていた。
「おや、珍しいね」
カウンターに座る沙耶香にバーテンが声をかけてきた。声をかけながらファースト=ラブ=ジュレップを出した。青いカクテルでウォッカとカルピスにミントの葉を浮かせてい
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