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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第170話 過去の闇
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 たった一日、それも数十分間だけだった。
 街ゆく人達とすれ違う、信号待ちで、公共機関で。その位の時間を共有しただけだった。

 でも、この時、詩乃は彼に助けを求めていた。

 精神状態が異常だった為、かもしれないけれど。はっきりと、名前も思い出し、その名前を呼んだのだった。










 だが、彼に縋ったのも数分間だけだ。


 徐々にではあるが、精神を立て直すことが出来てきた。今自分が欲しいモノは一体何なのか。それも思い出す事が出来たから。


――強くなりたい。


 それが詩乃にあった願望。

 あの悪夢の事件。

 でも、あの状況では、あの行動に出るのが当然だ、と言えるだけの強さが欲しかった。


――確かに、彼の名前を呼び、縋ってしまってけれど。
――確かに、彼には助けてもらったけれど。


 ……自分が抱えている重さを彼は知らない。


――なら、全てを知った上でも、彼はこの手を握ってくれるのだろうか?


 考えるまでもない。そんな事、判りきっていたから。
 人殺しの手。それを知ったら、握ろうとする人なんて誰もいない。今までもそうだったから。


 全てをわかってくれた上で、手を差し出してくれて、掴んでくれる。

 そんなモノは幻想だ。

 弱い心を持っていたら、何にでも縋ってしまう。だから、強さが欲しかったんだ。そう、戦場で容赦なく敵を倒していく女兵士の様な力。


 詩乃は、ベッドに横になりながらも、鏡に映った姿。……はっきりと今の自分の姿を見た。少々痩せすぎていて、目ばかりが大きく見える。鼻は小さく、唇も厚みが欠ける。

 あの世界の彼女、《シノン》とは比べるべくもない。

 唯一同じなのは、体格と両脇で細く結わえたショートという髪型だけ。現実の自分は栄養の足りてない猫の様な姿。……だが、シノンは、獰猛な山猫だ。

 あの世界では、発作など起こらず、戦い続ける事ができる。いつか、必ずその強さは自分のもとに還ってくる。


――誰も助けてくれはしない。自分を助けるのは自分自身だけだ。


 心の中で、本当にそれでいいのか?と聞き続けている弱気な声を、現実でのその声を撥ね退ける様に心の中で叫ぶ。

 自分よりも強いガンナー達は、あの世界にあと21人も君臨している。

 そして、その頂点があの男だ。

 その全てを打ち砕き、冥界へと送り込み、ただひとりの最強者として、荒野に君臨したその時こそ、詩乃はシノンと完全に一体化し、この世界においても、本当の強さを手に入れられるはずだ。

 現実でのあの出来事などは、その時に倒してきた強者達の屍の下に埋没されて、二度と浮かび上がってくる事はない。二度と
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