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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第170話 過去の闇
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ることは回避された……が。事件が起きた小さな郵便局、そして小さな街。委細漏らさず、だった筈だが 様々な御鰭のついた噂となって、燎原の火の如く街中を駆け巡った。
詩乃は、小学校では殺人者を意味する様々な派生語を浴びせられ、中学校では全て無視され続けた。
だが詩乃にとって悪夢はそこではなかった。元々、周囲の視線は大した問題ではなく、集団に属することへの興味が非常に薄かった事もある。
母親をずっと見てきたからこそ、だったと言えるだろう。
真の悪夢は、事件が詩乃の心の中に残していった爪痕にあった。
何年経とうとも、一向に癒える事なく苦しめ続けた。あの時の顔と手に残る重い感触が延々と。
だが転機はあった。
新川と言う新たな街で出来た友達の紹介で、GGOと言う世界を知った事から。
そして、現代。
「ぁぁぁぁぁ……!!」
詩乃は、喉の奥から、細い叫び声を絞り出しながら、両手で握ったあのモデルガン、プロキオンSLを凝視続けた。
そして、あの時の光景がフラッシュバックする。
自身の手に収まっている黒い銃。そして、浴びている返り血が手にまで付着し、ながれている。
何度瞬きをしても、それは消えない。幻影じゃない、とさえ思える程、現実感が出ていた。
「ぁ……ぁ……」
息が全くできず、呼吸困難に陥る。
喉の奥に舌が張り付いてしまい、呼吸ができなくなったからだ。そして、胃が激しく収縮し、吐き気が襲ってくる。
詩乃は何とか、《プロキオンSL》を全精神力を使って床に放り投げると同時に、口を押さえながらキッチンへと走り、ユニットバス内に駆け込む。
便器の蓋を跳ね上げ屈み込むと同時に、熱い液体が胃の底から沸き起こった。
喉が焼ける様に痛いが構うことなく、何度も何度も、体内にあるもの全てを排出するかのように嘔吐した。やがて、胃の収縮もなくなった頃、詩乃の精神力も無くなり、力尽きてしまった。何とか、片づけをし、立ち上がり、メガネを外して、洗面台で冷たい水を顔にかけた。
何度も、何度も。
そして、最後に口の中に僅かに残っている胃酸を洗い流すために、うがいを数回程すると、清潔なタオルで顔を拭った。
全てを終えた後、詩乃はユニットバス内の鏡を見て、思う。
――……ひどい、かお。
涙で赤くなった目。頬がコケてしまったかのように窪んでいる。目の下にはクマも出来ている様だ。そのまま……、精根尽き果ててベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。
あの銃は、見ない様にしながらタオルで隠し、再び引出しの奥へと放り込んで。
「だれか……たすけて……、たすけて……、だれか……
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