16部分:第十六章
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第十六章
「花・・・・・・!?」
「そう、花よ」
二人に対して答える。
「さあ舞え、黒い蘭」
その花は蘭であった。紅でも白でもなく漆黒の蘭であった。それを手に一輪。素早い動きで放ってきた。
すると花が散った。散った花の花びらは辺りに舞う。それは五つや六つではなく数え切れない程であり瞬く間に沙耶香の周りを覆った。
「その蘭で一体何をするつもりかしら」
「黒い蘭は甘い毒」
妖艶に笑ってそれに答える。
「来ればわかるわ」
「生憎私達は人とは違うのよ」
紀津音の影に異変が起こっていた。
ふさふさとした尻尾が生え、耳が狐のものになっていく。それが影にも反映されていた。
口にも牙がある。見れば理子も同じであった。
「だから。お花じゃ私達は倒せないわよ」
「紀津音」
理子が相棒に声をかけた。
「まずはあれを」
「ええ、わかったわ理子」
紀津音はそれを受けて術を出してきた。青い炎の玉が数個彼女の周りに現われる。それは身体にも纏っていた。
「狐火ね」
沙耶香はそれを見て言った。
「使えるとは思っていたけれど」
「そうよ、これが狐の力」
その火を生き物の様に操りながら沙耶香に答える。
「これで蘭も何もかも焼き払ってあげる」
「そして私は」
その横では理子が笑っていた。爪が伸びようとしていた。
見ればその爪もまた人のものではなかった。獣のものである。
「この爪で貴女を」
「心配することはないわ。殺したりはしないから」
「何度も言うけれど私達はそれは嫌いなのよ」
二人はそれは変わらなかった。
「けれどね」
だがそのうえで言う。
「お姉さんみたいな奇麗な人は」
「そう簡単に返すわけにはいかないわ」
「あら、私を頂くつもりかしら」
「そうよ」
二人の狙いは沙耶香の命ではなく沙耶香であったのだ。
「丁度ここは道玄坂。場所には困らないわ」
「いい場所を知ってるのよ。だからね」
「そうね。場所なら私も知ってるわ」
沙耶香もここには何度も足を運んでいる。そして女の子を味わっているのである。
「ならそこに。けれどね」
その黒い目が光る。
「それは私が勝った場合よ。もっとも負けるつもりはないけれど」
「あら、私達を抱こうっていうの?」
「人でないのもまた美味だから」
妖しい笑みを浮かべる。異形の者達であろうと美しければそれでよい。沙耶香には少なくとも世間にあるようなモラルは通用しないのである。
「味あわせてもらうわ」
「面白いわ。じゃあ貴女が勝ったら私達は貴女のもの」
紀津音が言った。
「そして私達が勝ったら」
今度は理子が言う。
「私が貴女達のものに」
「じゃあ行くわよ」
最初に動いたのは理子であった。
「こちらも容赦はしないか
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