15部分:第十五章
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第十五章
沙耶香は一人渋谷の道玄坂を歩いていた。この街は夜であっても人通りが絶えない。
男女のカップルもいれば遊び人の男もいる。派手な身なりと化粧の女もいる。その顔触れはまちまちであったがいずれも遊興と香水、そして化粧の香りを濃く漂わせていた。
その中を沙耶香は進む。退廃と魔性の香りをその身に漂わせながら。漆黒の、夜の闇の中に溶け込んでしまいそうな服と髪をそのままに坂を登っていく。
坂を登りつめた。すると周りには誰もいなかった。
「ようこぞ、ステージへ」
「待っていたわよ」
前には道がある。その向こうには黄色い、巨大な満月が見えている。漆黒の空をそれで青く照らしていた。
その月の中に二つの影が現われた。まるで沙耶香に自身の姿を見せるように。
「シルバーデビルね」
「ええ」
二つの影は沙耶香の言葉に答えた。
「宮原紀津音よ」
まずは紀津音が現われた。
「千葉理子よ」
続いて理子が。CDのジャケットで見たのと同じ顔であった。
だが服装は違っていた。紀津音は青いジーンズに草色のシャツ、スニーカー、理子はミニのキャミソールという格好であった。理子の靴はサンダルであった。
「名前はもう知っているわね」
「ええ。何をしているのかも知っているわ」
沙耶香はそれに答えた。
「もてるそうね」
「否定はしないわ」
それに紀津音が答えた。
「それが私の糧になっているのだし」
「何が望みかしら」
沙耶香の声が鋭くなった。
「何がって?」
「人の精を吸い取るのは。何が望みなの?」
「別に深い意味はないわ」
今度は理子が答えた。
「深い意味はないとは?」
「だって。あの娘達は楽しんでるでしょ」
理子は軽い調子で答えた。
「私達と交わって」
「それで私達はあの娘達に奇麗を与えているのよ」
「奇麗をね」
「ええ。少し精を貰うだけでね。別に命に関わるようなことはしてないわよ」
紀津音は言う。
「また言うけれど私達の流儀じゃないし」
「それに人を殺したら私達の恋人がいなくなるから」
「恋人、ねえ」
「奇麗にしてあげるかわりにちょっと精を貰う」
「疲れるだけよ。何か悪いかしら」
「それ自体は悪くはないわ」
沙耶香もそれには特に否定的なものは見せはしなかった。
「けれどね」
「けれどね。何?」
「こちらも仕事なのよ。このことは依頼主に報告させてもらうわ」
「私達の正体を?」
「そうよ。悪いけれどね」
「生憎こちらもそうされると困るわ」
理子がすっと前に出て来た。
「私達はまだまだ男の子も女の子も食べたいし」
「それに芸能界っていうのが気に入ってきたし。いいところじゃない」
「華やかだから?」
「それもあるわ」
だがそれだけではないのは沙耶香
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