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滅ぼせし“振動”の力を持って
彼とマケンとホッケー対決
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「…………多少不意は突かれた……そして予想外でもあるが、問題はない」


 飽くまでで冷静に、飽くまで正確に、周りの水とエレメントを纏わせスティックの柄を使い、パックを正面から迎え撃つ。

 不可視の槍と化したパックと、一つの武器と化したスティックがぶつかり合い、派手な音を立てる。

 競り合ったのは、一瞬。


「……何……!?」


 次の瞬間には―――パックは二つに分かたれ、後方へ流れて行く。


 そして、背後の壁……ゴールラインに小さく音を立ててぶつかり、


「試合終了で〜〜〜す」


 場に似合わぬノホホンとした穣華の声が、屋内プール室内に響き渡った。

 観客席からもワッ!! と歓声が上がった。
 結果がどうなったのか、言わずもがなだ。


「では試合の結果ー…………両者引分けとしまーす」
「「「「「えっ?」」」」」


 ……その答えが予想外だったのだろう。
 まるで花火をバケツに突っ込んだが如く、一気に盛り上がりが鎮静化してしまった。

 アズキもポカンとしていたが、すぐ我に返る。


「ど、どうして!? なんでだよ!?」
「えーとですね。大山君とデミトラさんの対決までならまだ度を越していた、で済むんですけども〜……アズキさんの先程の行為は完璧な黒でなくてもグレーゾーン。最後のゴールもパックが割られてからですしー……だから、プラマイゼロという事でー」
「んなっ……!」


 そりゃ人様の服を下着ごと脱がしてればなぁ……とそう言いたげな目で海童はアズキを見ているが、幸いにも彼女は穣華に食いかかるのに忙しく、目を向けられる事はなかった。


「納得いかねえよ! 折角決めたのに……」
「確かに勝負ではそうかもしれませんが〜…………マケンキと『Venus』の実力に関しては、納得行ったんじゃあないかな〜、皆さん?」


 そう言えば元々それの食い違いや譲れない感情からで勝負していた事を思い出したか、流石にアズキも何も言わなくなる。

 やっと終わったことで、春恋は溜息を吐きつつ座り込んだ。


「……て言うか私、元々彼女等に文句なんてありませんけど……もう充分、充分すぎるほど分かりました……ハイ」
「確かにその通りだ……個々の身体能力といい、彼の隠し玉といい良いモノだった。先程の非礼も詫びよう」


 それでもまだ個人的に納得いかない人物が二名ほどいたが、場の空気を呼んだのか顔に出すだけに留め、しかし確りと敵意をプンプン放ちながら、ギロリと睨み合っていた。

 頭を掻きつつプール底から上がろうとするアズキの背を見つつ、花を少しでも開かせたから良いかと、海童もまた嬉しげに一歩踏み出した。


「ねぇ、カッちゃぁん?」


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