暁 〜小説投稿サイト〜
滅ぼせし“振動”の力を持って
彼とマケンとホッケー対決
[14/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
ない。

 だが……五メートルライン付近まで来ても、最後の障害足るデミトラが、ゴールに立ちふさがっている。

 彼女を下さなければ、一点すらもぎとれない。


「来い」
「……っ!」


 たかが喧嘩の代理試合である筈なのに、とてつもない圧力を向けれられた海童の息は思わず詰まる。
 同時に、海童の心の中にも、『絶対に一矢報いてやる!』との確かな炎が揺らめいき始めていた。

 やる気がなかった先程までとは違う……真剣身を帯びた表情。
 彼の中には沸々と、『なめられっぱなしでは終れない』男の性による投資が膨れ上がっていた。


 簡単ではない、だがそれでもやるしかない―――――海童はスティックを振り上げ、思い切り振り抜く。


「っとぉ!」
「……」


 一回目の振りをフェイクとしてパックを弾き上げる作戦らしいが、されどデミトラは驚く事も動く事もなく、まるで騙せてはいない。
 高く上がったパックを睨み、スティックを今度は横薙ぎにする―――――それでも尚、デミトラはピクリとも動かない。

 これ以上フェイントをしたとして、果たして通用するのか……海童の中には炎だけでなく、不安すらも募り始めた。

 よしんばデミトラをフェイントで騙せても、彼女等『Venus』チームは水のエレメント操作により確かな足場が確保されている。
 不安定な足場から放たれる不確かな一撃に追い付く事など、それこそ造作もないだろう。

 何か強力な力があれば……だが衝撃波で正確に撃つには、拳か足を叩き込まねばならない……スティックで撃つなどとても出来ない―――――――


(『長ぇ得物もったら、そいつを体の一部として力を試してみな。今のお前でも単調ながら、すごい事が出来るぜ』)
「!」


 唐突に海童の脳裏へ伝来する、手助けとして口にしていた老人の言葉。

 海童は自然とスティックを腕の延長線か何かの様に伸ばして構え、後ろへ大きく振りかぶる。
 このスティックは持っているのではない、己の身体の一部なのだと。
 己の中心に存在する “震源” からのパイプは、その一部にも繋がっているのだと。


 目を静かに閉じる。
 僅かな時間集中する。


 そして……解き放つ。


「オォラアアアァァッ!!!」


 スティックの尖端にわずかな空気の揺らぎが見えた、と思ったのも束の間……思い切り振り降ろされパックを捉えた。

 瞬間―――軌跡をなぞるかの如く半月状に押し固められた “衝撃波” が、デミトラ目掛けて弾け飛んできた。


「何っ!?」


 地面を浅く抉り、唸り声を上げて、パックを砕かんばかりの威力を湛え吹き飛んでくる衝撃波。

 コレには流石の彼女も驚きを隠せず
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ