彼とマケンとホッケー対決
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ない。
だが……五メートルライン付近まで来ても、最後の障害足るデミトラが、ゴールに立ちふさがっている。
彼女を下さなければ、一点すらもぎとれない。
「来い」
「……っ!」
たかが喧嘩の代理試合である筈なのに、とてつもない圧力を向けれられた海童の息は思わず詰まる。
同時に、海童の心の中にも、『絶対に一矢報いてやる!』との確かな炎が揺らめいき始めていた。
やる気がなかった先程までとは違う……真剣身を帯びた表情。
彼の中には沸々と、『なめられっぱなしでは終れない』男の性による投資が膨れ上がっていた。
簡単ではない、だがそれでもやるしかない―――――海童はスティックを振り上げ、思い切り振り抜く。
「っとぉ!」
「……」
一回目の振りをフェイクとしてパックを弾き上げる作戦らしいが、されどデミトラは驚く事も動く事もなく、まるで騙せてはいない。
高く上がったパックを睨み、スティックを今度は横薙ぎにする―――――それでも尚、デミトラはピクリとも動かない。
これ以上フェイントをしたとして、果たして通用するのか……海童の中には炎だけでなく、不安すらも募り始めた。
よしんばデミトラをフェイントで騙せても、彼女等『Venus』チームは水のエレメント操作により確かな足場が確保されている。
不安定な足場から放たれる不確かな一撃に追い付く事など、それこそ造作もないだろう。
何か強力な力があれば……だが衝撃波で正確に撃つには、拳か足を叩き込まねばならない……スティックで撃つなどとても出来ない―――――――
(『長ぇ得物もったら、そいつを体の一部として力を試してみな。今のお前でも単調ながら、すごい事が出来るぜ』)
「!」
唐突に海童の脳裏へ伝来する、手助けとして口にしていた老人の言葉。
海童は自然とスティックを腕の延長線か何かの様に伸ばして構え、後ろへ大きく振りかぶる。
このスティックは持っているのではない、己の身体の一部なのだと。
己の中心に存在する “震源” からのパイプは、その一部にも繋がっているのだと。
目を静かに閉じる。
僅かな時間集中する。
そして……解き放つ。
「オォラアアアァァッ!!!」
スティックの尖端にわずかな空気の揺らぎが見えた、と思ったのも束の間……思い切り振り降ろされパックを捉えた。
瞬間―――軌跡をなぞるかの如く半月状に押し固められた “衝撃波” が、デミトラ目掛けて弾け飛んできた。
「何っ!?」
地面を浅く抉り、唸り声を上げて、パックを砕かんばかりの威力を湛え吹き飛んでくる衝撃波。
コレには流石の彼女も驚きを隠せず
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