神と悪魔と人間と
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言葉は無力。
せめて心が凍りついてしまわないよう、地面に膝を突いて抱きしめる。
子供特有の柔らかい髪を撫でて肩を抱き、背中をポンポンと軽く叩いて。
途切れ途切れに溢れ落ちる喪失の泣き声を、黙って受け入れる。
「……私と一緒に、お散歩しませんか?」
「さん ぽ?」
何十分経ったのか。
女の子の呼吸が落ち着くまで一緒に居た。
目尻に残る涙の跡を、女の子が持っていたハンカチを借りて拭いつつ。
にっこりと笑いかけてみる。
「王都の中を、いっぱい歩いてみましょう。美味しい物をたくさん食べて、綺麗な景色を見に行くのです」
「……でも……」
「陽が沈む前に帰宅すれば大丈夫です。さあ」
どうしますか? と。
腕を掴むのではなく、手のひらを上に向けて差し出す。
知らない人には付いて行くなと、言いつけられているのかもしれない。
女の子はしばらく悩み。ためらいながらも、指先をそっと乗せてくれた。
「行きましょうか」
二人で立ち上がり、女の子の手をゆっくりと引いて、教会を出た。
彼女の狭い歩幅に合わせて、商家が並ぶ通りをのんびりと散策する。
途中、一口大の果物に串を通して赤い水飴を掛けたお菓子を見かけた。
女の子は、うつむいていて気付かなかったようだ。
「ちょっと待っててください」と言って、店の前で足を止めてもらう。
「はい、どうぞ」
「……もらって良いの?」
「二本買ってしまったので。貴女に食べていただけると、無駄にならなくてありがたいのです」
膝を折り、女の子の目線の高さでお菓子を差し出す。
女の子は、お菓子と自分の顔を見比べて、おずおずと手に取った。
「……ありがとう……」
「こちらこそ」
食べ歩きなんて、いつ以来だろうか。
遠慮がちに少しずつ口に含む女の子と歩きながら。
慣れない甘さを味わった。
その後も、目的地を定めず景色が良い場所を探したり、どこからともなく聴こえてくる音楽を楽しんだ。
国の中心地なだけあって、日が暮れても人通りは絶えず、むせ返るような熱気もなかなか冷めない。
街灯がぽつぽつと色付き始める頃。
少しだけ顔を上げてくれるようになった女の子に案内してもらいながら、家の前まで送り届けた。
入るのが嫌なのか、女の子が少し渋った表情になる。
「……あ」
「フロール!」
女の子に声を掛けようとした刹那、家の玄関扉が乱暴に開かれた。
中から現れたのは、女の子と同じ色彩を持つ三十代くらいの男性と。
「フロール!!」
「お お母さ、ん?」
やはり女の子と同じ色彩で、三十代前半と思われる、ほっそりした女性。
二人は茫然と立ち尽くす女の子に駆け寄り。
競うよ
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