第一章
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ウィピル
グアテマラはメキシコの南にある国だ、そう聞いても日本人である大江牧子にとっては今一つわからないことだった。
牧子は話をしてくれた先輩の恵美にだ、その黒い部分が多い澄んだ瞳を惑わせてそのうえでこう言った。
「メキシコは知ってます」
「その国はなのね」
「はい」
そうだと答えるのだった。見れば顔は白くやや面長でだ、唇は奇麗なピンクで少し波がかった感じになっていて眉は細く見事なカーブを描いている。
髪は黒のロングヘアで背は一五〇程だ。服は赤のロングスカートと白のブラウスだ。何処かお嬢様めいた外見だ。
その彼女がだ、こう恵美に言った。
「旅行にも言って」
「面白かった?それで」
「はい、私これでもスペイン語喋れますし」
「そうよね、伊達にスペイン語学科にいないわね」
「はい」
通っている大学ではスペイン語学科だ、勉強熱しでもう普通読み書きと喋ることが出来る。
「通訳も出来ます」
「そうよね」
恵美はその膨らんだ頬の顔で頷いた。睫毛の長い目で唇は小さく赤い。縮れた感じの黒髪を後ろで束ね赤い帽子を被っている。黄色のパーカーの上着に黒いズボンだ。背は一五五位だ。
「だからよね」
「メキシコも行って」
「楽しんできたのね」
「いい国ですよ」
メキシコについてはだ、牧子はこう言った。
「本当に」
「治安が言われてるけれどね」
「麻薬とかの話はありますけれど」
メキシコ全体を見てというのだ。
「いい国ですよ」
「そうよね、けれどなのね」
「グアテマラは」
首を傾げさせての言葉だった。
「どうしても」
「それでだけれど」
恵美はコーヒーを飲む手を止めて牧子に言った、白い色の喫茶店の中で白いテーブルと席に座ってだ、牧子と飲むのは黒いコーヒーだった。
「今度ね」
「今度?」
「そのグアテマラ行かない?」
こう牧子に提案するのだった。
「安いツアー見つけたのよ」
「そのグアテマラへの」
「マヤ文明へのツアーね」
「あっ、そういえば」
ここで牧子も思い出した。
「グアテマラは」
「あそこがマヤ文明発祥の地よね」
「あの大きな顔の石像の」
「それでなのよ」
「あそこでツアーの話があって」
「それも格安のね」
そうしたツアーが行われているというのだ。
「ほら、私考古学専攻してるじゃない」
「はい」
通っている大学のだ、ついでに言うと二人は同じ大学の先輩後輩で高校時代で同じテニス部に所属して知り合った仲だ。
「だからですか」
「マヤ文明にも興味があってね」
「それでなんですね」
「行きたいと思ったけれど」
「先輩一人だけだと」
「何か寂しくて」
それでというのだ。
「牧子ちゃんを誘ってみたけれど」
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