第一夜「月の兎が2匹」(作成途中)
[1/2]
前書き [1]次 最後
夏の暮れのことだった。
真夜中の竹林に呑気な歌声が響く。
ところが楽しげなその歌、人里の間では聴いた者を道に迷わすとして恐れられていた。
歌の主は屋台を引きながら、林の奥へと進んでいく。
辺りをキョロキョロ見回している様子から、出店場所を探しているのだろう。
やがて広場に出た。
歌の主は
「またココでいっか!」
と呟いて屋台を広場の隅に置いた。
一息ついてから、歌の主は開店準備を始める。
網焼きの機械をさっと拭き、手慣れた様子で準備を進めていく。
最後に【焼き鳥・八目鰻】と書かれた赤提灯を下げ準備完了。
「今日はどのくらい来るかなぁ…」
カウンターに肘をつき、不安そうな様子を見せる。
その理由は、今夜がちょうど満月だからだ。
この竹林付近では満月の度にツノを生やした緑の妖怪が現れると恐れられ、
普段でさえ人通りの少ない竹林が今夜は誰も通らないと言っても過言では無いからだ。
では何故こんな日であるにも拘らず店を開くのか…
それは、顧客のターゲットが人間以外もいる…
いや、むしろ人間以外の客がこの屋台のメインだからだ。
実はこの歌の主も妖怪で、《ミスティア・ローレライ》という立派な名前を持っていた。
夜に人を鳥目にし、帰れなくする能力を持つ夜雀の妖怪である。
呑気に歌いながら、ジュージューと鶏肉の脂を焼く。
次第に香ばしい香りが辺りに広かった。
「まぁ、私の美声とおいしいお肉があれば…誰か来るわよね?」
自分の冗談に苦笑いをしていると、突然
「みすちー、焼酎一杯!」
誘われたように客が現れた。
どうやら常連さんのようだ。
「いらっしゃい♪いつものね〜♪」
ミスティアは開店早々の来客に安心して、嬉しそうに焼酎の入った一升瓶を取り出す。
瓶の側面にはボトルキープの目印に《藤原 妹紅》と書かれている。
「今日は満月だけど、慧音先生は大丈夫なの?妹紅」
「ああ、最近は暴れ回ることも無くなったし、家で大人しくしてるよ」
「ならよかった♪」
「ホントは二人で呑みに行きたかったんだけどな〜」
焼酎が杯に注がれ、妹紅のカウンターの前に置かれる。
クスッとミスティアは笑い、妹紅をからかう。
「やっぱりアンタは慧音先生のコトが…」
「う、うるさいっ!!」
照れるのを誤摩化すように、妹紅は出されたばかりの焼酎をイッキ飲みしてしまった。
酔いが回って来ると
「こ、これは…酒のせいで赤くなってるんだからなっ!!」
と必死で弁解する。
「ムキになる方が怪しいわよ〜?」
「ほっとけ!今度はレバー2本と生ビールだ!!」
慧音先生とは人里にある寺子屋で先生をしている者である。
人間と妖怪のダブルで、普段は殆ど
前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ