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黒魔術師松本沙耶香  銀怪篇
1部分:第一章
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事務所が私に声をかけるとは。何があったのですか」
「どうしても内密で調べて処理して頂きたいお話がありまして」
 隆美は沙耶香を見て言う。
「内密に?」
「はい、貴女でなければ出来ない仕事かも知れませんので」
「私が」 
 沙耶香はそれを聞いて目を細めさせた。その切れ長の目がさらに細まる。
「貴女のこともお聞きしています」
 隆美はまた言った。
「この東京でもっとも腕の立つ魔術師だとも」
「人はそう言うようですね」
「ですから。貴女をお呼びしたのです」
「それは貴女の為ですか。それとも」
 沙耶香はそんな隆美に問う。
「貴女の事務所が持っておられるタレントの為でしょうか」
「タレントの為です」
 隆美の答えはそれであった。
「我が事務所の大切なタレント達です。彼女達に何かがあれば」
 隆美はそれだけを危惧していたのだ。それは事務所の社長としてよりも彼女達を預かる者としての義務、そして彼女達への思いやりが感じられる言葉であった。
「取り返しのつかないことになります。ですから」
「私の力を借りたいと」
「はい」
 そして毅然として頷いた。
「宜しいでしょうか」
「私には一つの主義がありまして」
 沙耶香は悠然とした物腰で述べる。それは優雅と言うよりは退廃と情欲を感じさせるものであった。相手が女性であっても。
「呼ばれた仕事は必ず引き受けるという」
「それでは」
「はい」
 沙耶香も頷き返した。
「この仕事、引き受けさせてもらいます」
「有り難うございます」
 隆美はそれを受けてまずは微笑みを浮かべた。
「そのうえでお聞きします」
「はい」
 話は本題に入った。沙耶香がいささか強引に進めさせたのである。



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