三十二話:勉強と日常
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おまけ〜どこかの誰かの御先祖様の記憶〜
灰色の空に浮かぶ巨大な『ゆりかご』。
それを眺めながら彼女は忌々しそうに吐き捨てる。
「勝ち逃げして我の手の届かぬ所に行くか……。忌々しい」
「陛下ここにおられましたか」
「また汝らか。無駄だ。我は降伏などせん。そもそも奴らが契約を守る理由がない」
ゆりかごの圧倒的な力の前にベルカの戦乱は終わりを告げようとしていた。
彼女の国も入れて未だに戦い続けているのはほんの数か国しかない。
それ故に聖王連合側も無理に戦うことなくゆりかごの力を背景とした脅しという名の降伏勧告を行っていた。
しかし彼女は勧告を受け入れなかった。
だが臣下の者達は全員が降伏するよう諫言していた。
「陛下、どうかもう一度お考えを!」
「くどい、戦いとは殺すか殺されるかだ。それ以外の結末など認めん!」
「陛下……ならば仕方ありますまい」
最後の諫言が受け入れられずにうなだれていた臣下達だったがやがて意を決してその懐から武器を取り出し始めた。
彼女はその様子に狼狽するどころか残忍な笑みを浮かべて腰に差したサーベルに手を掛ける。
「よい、力で押し通そうとするのは嫌いではない。だが、貴様ら程の物が我に勝てるなどと思い上がっているとはな」
「……残念ですが我々だけではありませぬ」
一人が合図を送ると数えるのも馬鹿馬鹿しくなるような大軍が姿を現す。
それは全て彼女の国の兵士たち。そしてその全てが彼女に武器を向けていた。
「く、くくく……そういうことか。もう我の後ろについて来れぬという事だな?」
「申し訳ございません……陛下」
「よせ、臣下も民もおらぬ王など滑稽だ。……この国は貴様らの好きにするが良い」
どこか肩の荷が下りたような表情を見せながら彼女はその場から歩き去って行く。
兵士達はどうするべきか判断に迷ったものの道を開ける。
「……どこにいかれるのですか?」
「国を出る。貴様らは適当な死体でも見繕って我を討ち取ったとでも言えばいい」
「ご子息様はいかがなされますか?」
「連れて行く気はない。あれは生まれて間もない。適当な平民にでも預けておけば安全だろう」
「御意」
「ふ、我はもう王ではないのだぞ。今の指示を守る必要はないというものを」
彼女はサファイヤの様な目を細めしばらくぶりに微笑む。
自身が子を産んだ時ですら戦争中だという事で笑いもしなかった彼女が微笑んだことに臣下は騒めくが彼女はもう振り返らない。
自身の息子を世話する乳母のいる部屋に向かい強引に乳母を追い出すと最後の時を共にする。
「思えば、贈り物の一つもしてやってないな。金…では意味がないな。そうなるとシュトラが生み出した記憶継承でも? しかし真似事で
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